2020/08/13
【弁護士監修】固定残業代の上限は45時間が目安!45時間以上は認められる?
執筆者 編集部「固定残業代の上限残業時間はある?」「45時間以上の残業時間も認められる?」と思う方もいることでしょう。
固定残業代では、残業時間の上限残業時間は45時間が目安です。45時間以上の残業時間も全く認められないわけではありませんが、固定残業代の残業時間数とする場合には違法の可能性が高くなります。
この記事では、固定残業代の上限残業時間の目安、固定残業代として多く見られる違法なケースについて解説していきます。
【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)
監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか
【目次】
1. 固定残業代の上限残業時間は45時間が目安
固定残業代で上限となる残業時間は45時間が目安です。それ以上の残業時間を固定としているケースは違法の可能性が高くなります。
固定残業代とは、一定時間の残業をあらかじめ設定し、基本給に加えて固定の残業代を支払う制度です。それ自体は違法ではありませんが、残業時間が曖昧になりやすいため問題が発生するケースも多くあります。発生する問題の一つが、固定残業代の上限残業時間についてのものです。
「36協定」が締結されている場合には、固定残業の上限残業時間を45時間まで設定することが可能です。45時間以上の残業時間も全く認められないわけではありませんが、固定の残業時間とされている場合には違法となる可能性があります。
1-1. 36協定とは?
36協定とは、従業員に残業をさせる場合に会社が行わなければならない手続きです。労働基準法では法定労働時間として「一日8時間、週40時間」までと定めています。法定労働時間を超えて残業や休日労働などをさせる場合、会社は労働組合など労働者の代表と36協定を締結し、労働基準監督署に届出をしなくてはなりません。
ただし、36協定で定められた残業時間には上限が決められています。一般の労働者の場合には、下表に示したものが上限の時間となります。
期間 | 上限時間 |
1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1ヶ月 | 45時間 |
2ヶ月 | 81時間 |
3ヶ月 | 120時間 |
1年間 | 320時間 |
したがって、36協定が締結されていても、1ヶ月に45時間を超える残業時間が固定残業とされている場合は違法となる可能性があります。
1-2. 45時間以上の残業時間が認められるケースとは?
残業時間は1ヶ月で45時間を超えるものも認められるケースがあります。それは36協定に「特別条項」を付けた場合です。ただし、特別条項付き36協定であっても以下のことを守らなければなりません。
・上限を拡大できるのは年間のうち6ヶ月まで
・上限の拡大は「特別な事情」が具体的にあるときのみ
・残業時間は年に720時間以内
・残業時間と休日労働の合計は、月に100時間未満でかつ、2ヶ月平均、3ヶ月平均、4ヶ月平均、5ヶ月平均、6ヶ月平均がすべて1ヶ月あたり80時間以内
つまり、特別条項付き36協定は、あくまでも突発的で特別な事情があるときのみ、一時的に許されるものとなります。固定残業時間として45時間の上限を超える残業時間を、特別条項付き36協定を根拠として設定するのは違法の可能性があります。
なお上の内容に違反した場合には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
2. 固定残業代として違法になるケースとは?
以上で見てきたように、法律で決められた残業時間の上限を超えやすいことが、固定残業代で多く発生する問題の一つです。そのほかに、固定残業代では以下のような違法なケースが発生することが多くあります。
2-1. 固定残業代と基本給とが明確に区別されていない
固定残業代を採用する場合には、基本給と固定残業代とを明確に区別した上で、固定残業代が何時間分の残業代になるのかを明確にしなくてはなりません。それはたとえば、
「基本給25万円、固定残業代(20時間分)5万円」
のような決め方です。それに対して、以下のような決め方は違法の可能性が高いといえます。
「基本給25万円(固定残業代20時間分を含む)」…残業代がいくらかがはっきりしない
「基本給25万円(固定残業代含む)」…残業代も残業時間もはっきりしない
2-2. 超過した分の残業代や割増賃金が支払われない
固定残業代は、あらかじめ決められている残業時間を実際の残業時間が超過した場合には、超過した分の残業代は別途支払われなくてはなりません。超過した分の残業代が支払われない場合には違法の可能性が高くなります。
また、残業が深夜(午後10時~午前5時)や休日に及んだ場合は、割増賃金が支払われなくてはなりません(深夜は×1.25、休日は×1.3)。割増賃金を含めた実際の残業代が、固定残業代を上回る場合に、割増賃金を支払わないことも違法です。
2-3. 決められた残業時間に達しないと残業代を支払わない
固定残業代においては、仕事を早く終わらせて、あらかじめ決められた残業時間より実際の残業時間が短かった場合でも、あらかじめ決められた残業代を支払わなければなりません。決められた残業時間に達しないと残業代を支払わないのは違法です。
3. まとめ
固定残業代の上限残業時間は45時間が目安です。それ以上の残業時間を固定としている場合には違法の可能性が高くなります。
固定残業代は、残業代を節約しようとしてブラック企業が採用するケースが多くあります。「おかしいな?」と思ったら、労働問題の知識と経験が豊富な弁護士に相談してみるのがよいでしょう。
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