2020/06/24
【弁護士監修】残業が月200時間は異常!過労死の危険性とやるべきことを解説
執筆者 編集部もし月200時間もの残業を強いられていたら、異常かつ危険な状態です。月200時間の残業をしたせいで体調を崩したり、最悪の場合死に至ったりするかもしれません。残業時間が長時間になっていることは理解していても、対処法が分からないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、月200時間もの残業の危険性について解説し、会社を辞めるための方法もご紹介します。記事を読むことで、長時間残業の状況から抜け出せるでしょう。
【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)
監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか
【目次】
1. 月200時間の残業の異常性に目を向けてみよう
日々の業務に忙殺され、月200時間もの残業を強いられるような状況では、それがいかに異常な状態か気づくことが難しいかもしれません。仮に残業代を会社がきちんと支給していたとしても、心身の健康や命には代えられないでしょう。
異常性を認識するために、残業200時間を1日に換算してみるとともに、長時間残業が過労死のリスクを高める事実について解説します。
1-1. 残業200時間を1日の残業時間へ換算
月に25日出勤した場合、残業200時間だと1日8時間残業したことになります。法定労働時間と合わせると合計16時間です。通勤に往復1時間かかり、日常の生活(食事や入浴など)に2時間~3時間費やしていれば、1日の残りは4時間~5時間しかありません。プライベートな時間だけではなく睡眠時間の確保も難しく、健康的とはいえないでしょう。
1-2. 月200時間の残業は過労死ラインを倍以上超える長時間労働
厚生労働省が発表している「脳・心臓疾患の労災認定」によると、1か月の残業が45時間以内であれば業務と発症の関連性が弱く、月45時間を超えて長くなるほど関連性が徐々に強まるとされています。
業務と発症の関連性が強いといえるのは、発症前の1か月に100時間、または2か月間から6か月間に渡って、1か月の残業時間が80時間を超える場合です。つまり月200時間の残業は過労死ラインの倍以上であり、いつ命を落としてもおかしくないほどの危険な状態といえます。
2. 月200時間の残業は違法!36協定とは?
月に200時間もの残業が常態化しているような会社は、労働者のことをないがしろにしているといえます。労働者の心身の健康を損なうような、長時間の時間外労働は違法です。ここでは36協定に触れながら残業200時間の違法性に着目し、違反した場合の罰則についても解説します。
2-1. 時間外労働(残業)をさせるには「36協定」が必要
時間外労働や休日労働をさせるには、労働基準法第36条に基づき、使用者と労働者の代表、または労働組合の間で時間外労働や休日労働に関する協定を結ばなければなりません。この協定を36協定といい、労働基準監督署長に届け出ることが義務づけられています。
36協定に定められる時間外労働は、原則として月45時間・年360時間を上限とし、臨時的な特別な事情がない限り超えてはいけません。
2-2. 36協定の範囲を超える時間外労働は労働基準法違反
労働基準法第32条によって、労働時間は1日8時間・週40時間を超えてはならないと定められていますが、これを超えて労働させる場合の規定が同第36条です。36協定を結んでも、以下のような上限があります。
・時間外労働の上限は月45時間
・労使間の合意に基づき特別条項を取り入れた場合に限り、休日労働を含めて月100時間未満
・複数月の平均が80時間以内
・年720時間を上限とし
・年6回(6か月)
このように、月200時間の残業は法で許容される倍以上の残業時間です。違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科され処罰の対象となります。
3. 月200時間の残業は過労死につながる!症状が出たら要注意!
月200時間もの残業は過労死につながる水準です。若く健康で体力に自信のある方は自覚がないかもしれませんが、長時間労働は心身に悪影響を及ぼすでしょう。ここでは、長時間労働によって心身の健康にどのようなリスクがあるのか、代表的な4つの例を挙げて危険性を解説します。
3-1. 心臓の健康障害「心疾患」
短期間の過剰な負荷、あるいは長期間に渡る疲労の蓄積によって引き起こされる心疾患(虚血性心疾患など)には、心筋梗塞、狭心症、心臓性突然死、解離性大動脈瘤などがあります。心疾患にともなう症状は、動悸、息切れ、倦怠感、胸の鈍痛(漠然とした痛み、締め付けられたり重しが載ったりしている感じなど)が現れることが多いようです。
3-2. 脳の健康障害「脳疾患」
過労死に直結する健康障害として「脳疾患(脳血管疾患)」があります。具体的には脳内出血(脳出血)、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症などです。
脳血管疾患の予兆は、片方の手足や顔半分のしびれや麻痺、呂律が回らない症状が挙げられます。ほかにも激しい頭痛や、立ったり歩いたりできずふらふらする症状が出て日常生活をおくるのに支障をきたすかもしれません。
3-3. 精神障害は自殺につながることも
メンタルヘルスの不調と睡眠不足は密接な関係がありますが、残業200時間ともなると慢性的な睡眠不足に陥り、うつ病をはじめとする精神障害を引き起こす可能性があります。
うつ病の予兆としては、楽しみや喜びが感じられない、寝つきが悪く何度も目が覚め睡眠がうまくとれないなどです。気分が晴れない状態が2週間以上継続する場合は、できるだけ早く医療機関に受診しましょう。
3-4. 過労・睡眠不足は事故の危険性が高まる
仮に心身への悪影響が見られないとしても、疲労は蓄積します。結果的に仕事の生産性が落ちるだけではなく、注意力が散漫になり事故の危険性が高まるでしょう。
長時間労働が原因の居眠り運転による、トラックやバスの事故のニュースを見たことがある方も多いのではないでしょうか。長時間労働さえなければ防げた事故だったかもしれません。
4. 長時間残業から抜け出そう!会社を辞める方法
長時間労働が常態化している会社は「ブラック企業」といわれても仕方ないでしょう。一刻も早く会社を辞められるとよいのですが、ブラック企業の場合は退職をいい出しにくい場合が多いかもしれません。スムーズに退職できるヒントをご紹介します。
4-1. 退職意思を明確に伝える
退職の意思は民法上では2週間前に伝えればよい(民法第627条1項)のですが、就業規則により予告期間が延長されている場合があります。一般的には1か月、できれば2か月程度の余裕をもって退職の意思を伝えましょう。万が一「退職願」を受理してもらえない場合は、「退職届」を書いて内容証明郵便で会社に送る方法があります。
退職願は会社に退職をお願いするものです。退職届は「労働者は労働契約を一方的な意思表示によって解約できる」とした民法の定めにより、一方的に退職を宣言するものになります。退職届には会社を辞める詳しい理由を書く必要はありません。
4-2. 辞めづらい場合は弁護士へ相談を!
どうしても自分で退職を切り出しづらい場合、弁護士に依頼するのがひとつの方法です。弁護士であれば退職を引き留める会社のいい分が、法的に根拠がないことなど理路整然と説明できます。弁護士に依頼することで退職の意思が固いことも伝わりやすく、会社との交渉がスムーズに行えるでしょう。
長時間労働が常態化した会社では、残業代の未払いがある場合も考えられます。その請求も弁護士に一任でき、転職活動などに専念できるでしょう。
4-3. 退職を了承してもらってからやるべき3つのこと
会社から退職を了承されたら、「退職時期の決定」「有給消化の時期」「引き継ぎ、挨拶回りの計画」の3点について上司と相談・交渉をします。
しかし退職が決まったら会社に行くのが苦痛かもしれません。その場合は事前に有給が何日あるのか調べ、引き継ぎと挨拶回りにかかる日数を計算してから退職届を出し、できるだけ出社しなくて済むようあらかじめ準備することをおすすめします。
4-4. 転職までブランクがある場合は手続きを忘れずに!
まだ転職先が決まっていない場合など、次の会社に就職するまでブランクがある場合は以下の手続きが必要です。
・失業保険申請
退職した会社から「雇用保険被保険者証」と「離職票」2枚を受け取り、本人確認書類、マイナンバーを確認できる書類、雇用保険被保険者証、離職票2枚、写真(縦3cm×横2.5cm)、預金通帳、印鑑をもってハローワークで申請します。
・社会保険の手続き
扶養してくれる家族がいる場合は扶養に入ります。社会保険の資格失効日の前日までに2か月以上会社の社会保険に加入していた場合は、退職した会社の社会保険を任意継続するか、国民健康保険に加入するかを選びましょう。いずれにも該当しない場合は国民健康保険に加入します。自治体の健康保険窓口で手続きが可能です。
・年金の手続き
年金は、厚生年金など会社員の種別(第2号被保険者)から第1号被保険者への種別変更をします。自治体の年金窓口で手続きが可能です。再就職した場合は会社で年金加入の手続きを行うので、自分で手続きをする必要はありません。
5. 泣き寝入りはダメ!未払い残業代を請求する方法もチェック
月200時間もの残業が常態化しているような会社は、残業代をきちんと支給していない可能性もあります。未払い残業代があれば、請求する権利があることを覚えておきましょう。未払い残業代を請求することが、将来の長時間労働の犠牲者をなくすことにつながるかもしれません。
5-1. 200時間残業をしている場合の残業代は多額な可能性大
2019年10月に改正された東京都の最低賃金の1,013円で、200時間残業したときの残業代を計算してみます。
1,013×1.25(割増率)×200=25万3,250円
※中小企業を除く大企業の場合、月60時間を超える部分の割増率は1.5倍(中小企業は2023年4月1日から適用)
最低賃金でこれだけの金額です。正確に基礎賃金を算出して計算すれば、さらに高額になるでしょう。
5-2. 辞める手続きの一方で残業の証拠も集めよう
未払い残業代を取り戻すためには、残業時間を証明する証拠を集めておく必要があります。具体的には、「タイムカード」「業務日報」「パソコンの利用履歴」「オフィスの入退室記録」「パソコンの業務に関連するメール送信履歴」などです。証拠隠滅を防ぐためにも、コピーや写真を残しておきましょう。
スマートフォンのGPS機能を活用して残業時間を自動で記録する無料アプリ「ザンレコ」は、裁判の証拠としても使えるのでおすすめです。
5-3. 未払いの残業代請求は 弁護士へ依頼するのが安心!
月200時間もの残業で心身ともに疲弊したうえ、未払いの残業代を自分で会社に請求し、交渉を重ねるというのは億劫かもしれません。そのような場合は、残業代の未払い問題に詳しい弁護士に依頼しましょう。
残業時間の証拠が不足しても弁護士が会社に証拠の開示を請求でき、残業代の計算や会社との交渉をすべて任せられます。労働審判や訴訟に発展しても安心です。弁護士に依頼したほうが、取り戻す残業代の取得額が高くなる傾向があります。
6. まとめ
200時間残業が常態化している会社は異常といえます。長時間労働は心身に悪影響を及ぼすことは、誰もが知っている事実でしょう。労働環境の改善が見られない場合は、自分を守るために転職することもひとつの有益な方法です。
退職や未払い残業代をスムーズに進めるには、弁護士に相談するとよいでしょう。退職から残業代の請求まで労働問題に詳しい弁護士に依頼することで、負担を軽減できます。
ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功/不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るか分からない中で、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。
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