2020/06/19
あなたのしているサービス残業は違法です!サービス残業をやめるための方法や未払金を請求する方法とは
執筆者 編集部残業が常態化している企業に勤めている方の中には「残業代はもらえなくても残業しないといけない……」というようなつらい環境におかれている方もいるのではないでしょうか。しかし、サービス残業は違法です。
そこでこの記事では、サービス残業の実態や違法である根拠、サービス残業をさせられている場合の対応策をご紹介します。現在サービス残業に悩んでいる方は、明日からどうすればよいのかが見えてくるでしょう。
【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)
監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか
【目次】
1. サービス残業は違法です
労働基準法では、原則として「1日8時間」かつ「週40時間」という実務労働時間の上限を定めています。上限を超える労働は残業となり、会社は残業代を支払わなければなりません。
これは法律で決められていることであり、残業代を支払わない場合は「違法」となります。雇用契約の内容によっては、固定給の中に残業代が含まれている場合もあるでしょう。その場合は別途残業代を請求できません。
サービス残業をさせる行為には罰則が科されます。内容は「懲役6か月以下または30万円以下の罰金」というものです。通常、極めて悪質であると判断されたケースに対して科されます。
2. サービス残業の実態
違法であるにもかかわらず、サービス残業が行われている会社は少なくありません。この章では、よくみられるサービス残業の例をいくつかご紹介します。自分の状況にあてはまるケースがないか、確認してみてください。あてはまる場合は対策が必要です。
2-1. 法定労働時間以外の勤務実態の記録を残せない
「定時になるとタイムカードの打刻をさせ、その時間以降は給料が計算されない」というケースがあります。つまり、法定労働時間を超えて労働したという事実を残させないようにしているケースです。悪質といえるでしょう。
近年は残業に対する目が社内だけではなく、世間からも厳しくなっているため、徐々に減ってきている例です。しかし完全にこうした形態がなくなったわけではありません。定時のあとは会社で残業できない状況にし、家に業務をもち帰らせるようなパターンも「事実を残さない」という状況で一致します。
2-2. 会議の時間は残業と見なされない
定時の後に会議が行われた場合に、この会議の時間を残業時間と見なされないケースがあります。しかし会議も会社の業務(労働)であり、定時を超えて行ったのであればきちんと残業代が支払われなければなりません。
「出勤後制服などに着替える時間」「休憩中に指示された電話番の時間」「定時後に行われる終礼の時間」なども労働時間とみなされることがあります。業務に対して対価を請求することは労働者の権利なので、きちんと請求をしましょう。
2-3. 残業代が固定で支払われている(みなし残業の誤認)
「固定残業代として支払っている」という理由で、残業代が支払われないケースもあります。あらかじめ一定の残業時間を想定して、その分の残業代を毎月固定で支払う制度(「みなし残業」(固定残業制))を理由にしているケースです。
会社が制度を正しく利用しているのなら問題ありませんが、悪用や誤認をしているケースも少なくありません。適切に処理されていなければ違法となります。
3. サービス残業で会社が受けるペナルティー
サービス残業をさせることは違法であると解説しましたが、させた会社にはどのようなペナルティーが待っているのでしょうか。ここでは初めの章でご紹介した罰則(懲役6か月以下または30万円以下の罰金)以外のペナルティーとして、「是正勧告」「付加金」を詳しく解説します。
3-1. 是正勧告
ひとつめのペナルティーとして挙げられるのは、「労働基準監督署から指導や是正勧告を受ける」というものです。労働基準監督署は厚生労働省の出先機関で、労働基準法をはじめとした労働関係の法令を守らない企業を監督・指導しています。
労働基準監督署の調査によってサービス残業の事実が認められれば是正勧告などがなされ、会社は是正に努めなければなりません。勧告にしたがわなかった場合や悪質だと判断されれば、司法処分に回されて罰せられることもあります。
3-2. 未払金とは別に付加金を支払う
サービス残業で未払いになっている残業代は会社に対して請求できます。請求を行う際、未払金とは別に「付加金(労働基準法違反に対する罰金のようなもの)」も請求できることを知っておきましょう。付加金は、裁判所が労働者の請求に基づいて支払いを命じます。請求できる額は未払金と同額です。
こうした場合、会社は2倍の額を支払わなくてはいけなくなります。そのため、会社は「なるべく裁判を避けたい」と考えるのが通常です。
4. サービス残業をやめるための方法
違法なサービス残業を会社に強いられている場合、労働者はどのような対抗策がとれるのでしょうか。この章では、主な4つの策をご紹介します。自分の状況や、今後の身の振り方などを考慮しながら適した策を検討してみてください。
4-1. 労働基準監督署に相談する
労働基準監督署に報告・相談をして調査が行われた場合、サービス残業が認められれば指導や是正勧告がなされます。
ただし労働基準監督署は人員不足で忙しい機関のため、なかなか動いてくれなかったり後回しにされてしまったりすることも多いのが実情です。解決まで時間がかかってしまうケースや、解決まで至らないケースもあります。
報告・相談をする際には、サービス残業の実情を正確かつ具体的に説明できるようにしておきましょう。また、根拠となる資料も用意しておくことをおすすめします。何も根拠がない状態では、労働基準監督署も動きづらいでしょう。
4-2. 労働組合に頼る
労働組合に相談するという方法も考えられます。労働組合は、労働者の利益や権利を守ることを目的に結成された労働者団体です。
同じ企業の労働者で結成される「企業内組合」と特定企業に所属しない「ユニオン(一般労働組合)」があります。自分の会社に組合がない場合やあまり機能していない場合は、ユニオンに相談するのがおすすめです。
ただしユニオンの性質上、「会社と徹底的に闘う」ことを余儀なくされる場合もあるため、ユニオンへの加入は慎重に判断しましょう。今後の会社との向き合い方をしっかりと考慮したうえで、よく検討することが大切です。まずは信頼できる上司や先輩に相談してみるのもよいかもしれません。
4-3. 弁護士に相談する
弁護士に相談して対応を考えることもひとつの手です。特に、これまでのサービス残業で未払いになっている残業代を会社に請求したい場合は、弁護士に相談する方法が有効でしょう。
未払い残業代は自分でも請求できますが、複雑な手続きが多く、会社と直接やり取りすることになるため精神的な負担も考えられます。弁護士に頼めばこのような心配がなくなるほか、自分で請求するより取り戻せる確立や金額も高くなるでしょう。会社の対応も、より真剣になることが予想できます。
4-4. 変わらない会社を諦めて転職する
「動いてみたけれど会社が変わることは期待できそうにない……」「そこまでしてこの会社に残りたいとは思わない」といった場合は、サービス残業のない会社に転職するのも選択肢のひとつとなります。
なかなか辞めさせてくれないというケースもあるようですが、退職も労働者に与えられた権利です。どうしても退職届を受け取ってもらえないならば、内容証明郵便を利用して「たしかに退職届を出した」という証拠を残しておきましょう。
5. 未払い残業代を請求する方法と注意点
「これまでのサービス残業で未払い残業代がたまっている」という方に向けて、未払い残業代を請求する方法や、請求するうえで知っておきたい注意点をご紹介します。参考にして、本来支払われるはずだった未払い残業代をきちんと取り戻しましょう。
5-1. 証拠集めをする
証拠がないと請求は難しいため、なるべく証拠を集めておきましょう。具体的には、「残業を証明する証拠」「残業代計算に使う証拠」が必要です。
残業を証明する証拠としては、タイムカードや交通ICカード型定期の使用履歴、勤務時間表や出勤簿のコピーなどが挙げられます。スマホのGPS機能などを使って残業の証拠を残せるアプリの利用もおすすめです。残業代計算に使う証拠には、就業規則や雇用契約書などがあります。
また、会社が十分な支払いを行っていなかったことを証明する資料として、全労時間が記載されている給与明細があるとよいでしょう。
(参考: 『ザンレコ』)
5-2. 未払い残業代を計算する
未払い残業代を求める基本式は、【1時間あたりの賃金×残業時間数×割増賃金率】です。1時間あたりの賃金は、日給制の場合であれば日給を8時間(1日の法定労働時間数)で割って出しましょう。
月給制の場合は、【月給÷1か月の平均所定労働時間数】で求められます。1か月の平均所定労働時間数は、【(365日(うるう年であれば366日)-1年間の休日数)×1日の所定労働時間数÷12】で算出しましょう。
割増率は労働の種類によって異なります。以下に労働の種類別の割増率をまとめたので、参考にしてください。
・時間外労働(法定労働時間を超える残業):1.25倍
・時間外労働(大企業において、1か月60時間を超える残業):1.5倍
・深夜労働(22時~翌朝5時の労働):1.25倍
・休日労働(法定休日の労働):1.35倍
・時間外労働(法定労働時間を超える残業)+深夜労働:1.5倍
・休日労働(法定休日の労働)+深夜労働:1.6倍
5-3. 会社と交渉をする
未払い残業代が算出できたら、会社に残業代を支払うよう交渉しましょう。交渉に応じてくれない、交渉の場すら設けてくれないという場合は、内容証明郵便を送ることをおすすめします。内容証明郵便とは、文書の内容を郵便局が証明してくれる特殊郵便のことです。送る際は以下の内容を記載しましょう。
・会社名・所在地
・自分の氏名・住所
・雇用契約の内容
・残業の事実、残業代未払いの事実
・上記事実の証拠がある旨
・残業代の額
・請求金額・支払いの期限
・振込口座
5-4. 労働審判を行う
任意交渉でうまくいかなかった場合、労働審判という手段があります。労働審判は、労働問題の迅速な解決を図るために用意されている法的手続きです。
裁判所で行われますが、訴訟より短期間での解決が期待できるというメリットがあります。結果が確定すれば裁判上の和解と同一の効力をもつのも特徴です。ただし、審判結果に対して当事者から異議申立てがなされればその効力は失われ、訴訟に移行することになるでしょう。
(参考: 『裁判所|労働裁判手続』)
5-5. 訴訟で残業代を支払ってもらう
労働審判をしても解決に至らなかった場合は、民事訴訟を起こして残業代の回収を図ることもできます。これは、最終手段といえるでしょう。個人で訴訟を起こすのはなかなか大変なため、弁護士に相談して行うのが一般的です。
ここまでもつれ込んでしまうことを避けるために、最初の交渉段階で弁護士に相談するというのも賢い方法かもしれません。また最初に相談しておけば、万が一裁判にもつれ込んだ際にもそのまま弁護士が代理人を務めてくれます。
5-6. 【注意】残業代請求は時効がある
残業代の請求には時効があることを知っておきましょう。時効の期間は、2020年3月31日までに発生した残業代については「2年」ですが、労働基準法の改正により2020年4月1日以降に発生する残業代については「3年」となりました。2020年4月1日より前の時点では、2年より前のサービス残業については、未払い分の残業代を請求できませんので注意しましょう。
未払い残業代の請求を考えている場合はなるべく早めに動くことが重要です。「お金に困ったときに……」「退職してから……」と先延ばしにしてしまうと、請求できるはずだった過去の未払い残業代はどんどんと減っていってしまいます。
6. 着手金0円で依頼ができる『アテラ 残業代』
スムーズかつ確実に残業代を取り戻すには弁護士に頼むのが一番です。弁護士に頼めば面倒な手続きや精神的負担も少なく、自分で請求するより成功率も取り戻せる金額もアップします。しかし弁護士に支払う費用が心配という方もいるでしょう。
そのような方には、着手金の立替えサービス『アテラ 残業代』がおすすめです。このサービスを使えば、手元に資金がなくても安心して弁護士を利用できます。着手金を立替えてくれるうえ、万が一残業代が返ってこなくても立替えてもらった着手金を実質返済しなくてよいためです。
7. まとめ
サービス残業で未払いになっていた残業代は会社に対して請求できます。必要に応じて労働基準監督署や労働組合に相談すると、解決が望めるかもしれません。サービス残業代を請求するには、法律のプロである弁護士に依頼するのが確実です。
ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功/不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るか分からない中で、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。
そんな方におすすめなのが『アテラ 残業代』です。
①『アテラ 残業代』では、弁護士の着手金を立替えてくれるので、お手元から現金を出さずに、弁護士に着手金を払って依頼することができます。
②さらに、『アテラ 残業代』を利用すると、敗訴した場合や会社からお金を回収できなかった場合には、立替えてもらった着手金を実質返済する必要がないので、リスク0で残業代請求を行うことができます。
残業代請求をするときのリスクは、最初の着手金を支払うことで敗訴したときに収支がマイナスになってしまうことですが、『アテラ 残業代』を利用することでそのリスクがなくなります。
着手金にお困りの方、残業代請求のリスクをゼロにしたい方は、ぜひ『アテラ 残業代』をご利用ください。
なお、着手金支払いの負担・リスクではなく、どの弁護士に頼むかでお悩みの方は、ぜひ株式会社日本リーガルネットワークが運営するWebサイト『残業代・解雇弁護士サーチ』の弁護士検索機能をご利用ください。