2020/06/19

【弁護士監修】残業60時間って違法じゃない?違法となる場合や残業代の計算方法は?

執筆者 編集部
残業代関連

月60時間もの残業が続いていて、仕事がある日には予定を入れることができず、休日は疲れが残っていて遅くまで寝てしまうという方もいるのではないでしょうか。

毎月のようにその生活が続いている場合は、会社の労働体制が違法状態にある可能性があります。違法労働が続く会社では、残業代も正しく支払われていないかもしれません。

今回は月60時間の残業が違法になるケースを解説します。きちんと把握すれば、自分の状況が違法にあたるのか判断でき、必要に応じて適切な対応ができるようになるでしょう。

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

1. 残業60時間は平均より多い


月60時間の残業が当たり前になっていると、毎日のように残業することにあまり疑問をもたない方もいるかもしれません。しかしそれはほかの会社でも当たり前のことなのでしょうか。

転職・就職の情報サイトOpenWorkの調査によると、残業時間の平均は25時間程度です。月60時間の残業時間は平均を大きく上回っています。月60時間残業が平均的だったのは2014年のコンサルティングやマスコミ、不動産業界です。それらの業種でさえ、今では月40時間程度の残業が平均になっています。

参考:『日本の残業時間 定点観測』

2. 残業60時間は違法か?


月60時間の残業を平均化すると、毎日3時間程度残業していることになります。疲労が解消できず、「残業を月に60時間もさせるのは違法なのではないか」と思う方もいるでしょう。ここでは、月残業60時間が違法になるのかについて解説します。自分の現状を正しく理解して、今後の対応を検討しましょう。

2-1. 法律で決められている残業時間

労働基準法で定められている労働時間の上限は、「1日8時間・週40時間」です。これを超える場合は違法になります。

「それなら月残業60時間は違法になるだろう」と思う方もいるでしょう。たしかに、この労働基準法の上限は超えているので、このままでは違法になります。しかし、労使間で別の取り決めをしている場合はこの限りではありません。次ではその取り決めについて見ていきましょう。

2-2. 36協定を結ぶと法定労働時間を超えても違法ではない

その取り決めが36協定と呼ばれるものです。36協定とは、時間外労働(残業)や休日労働に関して労使間で結ぶ契約のことで、労働基準法第36条に定めがあることから36協定と呼ばれています。

「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などについて定め、労使間で契約を結び、所轄労働基準監督署長へ届出を行うと36協定締結が認められます。正しく締結されると「1日8時間・週40時間」という、労働基準法で定められた法定労働時間を超えた労働が可能です。

ただし、この36協定にも労働時間に関する一定の規制があります。原則として「月45時間・年360時間」を超える時間外労働は認められません。つまり、この規制ではまだ月60時間残業は違法になります。

ここでポイントになるのが、36協定の特別条項です。臨時的な特別の事情があって労使間で合意がある場合(特別条項)は、いくつかの条件のもと「月45時間・年360時間」を超える残業が認められます。この特別条項が36協定に付いていると、月60時間残業が違法でなくなるのです。ただし、月45時間を超える残業は年6回までという制限もあります。

参考:『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』

3. 残業60時間が違法となる場合


前述のとおり、特別条項がついた36協定を結んでいる場合は、月60時間の残業が認められます。ただし、1年中いつでも何度でも月60時間を超えてよいわけではありません。

ここでは、特別条項つきの36協定を結んでいても月60時間の残業が違法になるケースを説明します。

3-1. 36協定で決められた時間以上残業している

特別条項つきの36協定では、臨時的な特別の事情があれば月の残業が45時間を超えることも認められます。特別な事情とはたとえば、経理部に所属していて決算期の準備のために業務が集中する場合や、突発的なトラブルなどの対応が必要な場合などです。そのような特別な事情が認められれば月60時間の残業も違法ではありません。

しかし、働き方改革関連法案の成立により、特別条項つきの36協定であっても時間外労働は「年720時間以内」「月100時間未満(休日労働含む)」「2か月・3か月・4か月・5か月・6か月の月平均がすべて80時間以内(休日労働含む)」「月45時間を超えてよいのは1年のうち6か月まで」という上限が設けられました。

つまり月残業60時間を超えてよいのは年6回までということです。年7回以上は違法になります。

参考:『働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~』

3-2. 残業代が正しく支払われていない

月60時間の残業が違法とされるケースはもうひとつあります。残業により発生したはずの残業代が正しく支払われていない場合です。残業代がまったく支払われていないケースはもちろん、一定の金額は支払われているものの、正しい金額ではない場合も同様です。

これは労働基準法の、法定労働時間を超えた労働に対しては規定の割増賃金を支払わなければならないという定めに違反していることになるので、違法となります。

会社は労働者に時間外労働をさせた場合、適切な計算に基づく報酬を支払わなければなりません。労働者は正しい計算方法によって算出された残業代を受け取る権利があります。

4. 月残業が60時間の場合の残業代の計算方法

正しい残業代を受け取るには、正しい残業代を計算し、正当な金額を把握しなければなりません。具体的には、下記の計算式で求められます。
【残業代=1時間あたりの賃金×割増率×残業時間】

「1時間あたりの賃金」とは、1時間働いたときに発生する賃金です。月給制であれば「月給÷1か月の平均所定労働時間」で算出できます。「割増率」とは、時間外労働や深夜労働などに対する割増賃金の増加率のことです。労働条件によって異なりますが、時間外労働は「1.25」以上になります。

それでは、月60時間残業している方の残業代を計算してみましょう。ここでは、月給30万円、月の平均所定労働時間が160時間、割増率1.25として計算します。1時間あたりの賃金は下記の通りです。
【30万円÷160時間=1875円(1時間あたりの賃金)】

次に、1時間あたりの賃金を用いて残業代を計算します。
【1875円×1.25×60時間=14万625円(残業代)】

14万625円が月給30万円の方が60時間残業した場合のおおよその残業代です。自分のケースと照らし合わせて、残業代が正しく支払われているか確認しましょう。

5. 未払い残業代は請求できる


普段の残業代と計算式で導き出した本来もらうべき残業代を比較すると、未払いの残業代があるかどうか確認できます。未払いの残業代がある場合は、会社に請求可能です。ここでは、未払いの残業代があった場合に備えて請求方法をご紹介します。

5-1. 残業代請求は時効があるため注意

未払いの残業代を請求することは可能ですが、忙しいからと後回しにしていると、請求権が時効になってしまうかもしれません。

残業代を請求する権利の時効は、労働基準法第115条で2年と定められており、2年以内に権利を主張しないと請求権が消滅します。例外的に、残業代の未払いが悪質なケースなどは、請求権が3年に延長されることもありますが、認められた例は少なく、2年を過ぎると泣き寝入りの可能性が高まるでしょう。

参考:『労働基準法』

5-2. 残業をしていた証拠を集める必要がある

より確実に残業代を回収するためには、残業していた証拠をなるべく多く集める必要があります。証拠としては以下のようなものが有効です。

・タイムカード
・パソコンの使用履歴
・日報
・メールやFAXの送信記録
・シフト表
・手書きの勤怠管理記録
・残業時間を記したアプリの記録
・家族への帰宅連絡

これらの証拠が集められない場合も諦めてはいけません。これからでも集めていきましょう。ほかに該当しそうなものがあって、有効かどうか判断に迷う場合は弁護士などに相談するのがおすすめです。

参考:『ザンレコ』

5-3. 残業代請求は自分より弁護士に依頼するほうがよい

実際に残業代を請求するとなると、未払いの額を確定させて会社へ請求し、支払わられない場合は裁判も検討することになるでしょう。手続きは複雑になり、専門知識も必要です。一般の方が自分でそれらの対応をすべて行うのは困難かもしれません。また、勤めている会社を訴えるとなると、精神的な負担も大きくなります。

それらのことを考えると、残業代を請求する場合は弁護士へ依頼するのが有効です。弁護士に依頼する場合のメリットとデメリットをまとめました。

【メリット】
・証拠集めに協力してもらえる
・自分が窓口にならない分、精神的な負担が軽減される
・裁判に勝てる可能性が高まる
・会社の対応が軟化する可能性がある

【デメリット】
・費用がかかる
・どの弁護士に相談してよいのかわからない

6. 弁護士への依頼なら『アテラ 残業代』を活用してみて

上のデメリットにも挙げましたが、残業代請求を弁護士に依頼する際に懸念することのひとつが費用でしょう。残業代が正しく支払われておらず、着手金を用意するのが難しいという方もいるかもしれません。

そのような場合は、『アテラ 残業代』の活用を検討してみてはいかがでしょうか。『アテラ 残業代』は、残業代請求に必要な着手金を負担してくれる弁護士費用提供サービスです。敗訴した場合や予定より回収できる金額が少なくなった場合など、不利な状況が発生したときは、負担が実質ゼロになる仕組みのため安心して利用できます。

参考:『アテラ 残業代』

7. 長時間残業をしないためにはどうすればいい?


残業代の未払い問題を解決するには、残業代請求以外にも方法があります。残業がなくなれば、残業代に関する不満やトラブルは生まれません。ここでは、今日から実践できる長時間残業を防ぐための取り組みや相談先をご紹介します。

7-1. もっと効率よく仕事ができないか考える

生産性や効率をアップできれば、時間内に仕事を終えられる可能性が高まり、結果的に残業がなくせるかもしれません。そのためには、仕事をより効率よく処理するための工夫を考えてみましょう。たとえば、以下のような方法はいかがでしょうか。

・仕事に優先順位をつける
・作業時間で区切って、時間を意識する
・システムや最新ツールを有効活用して効率化を図る
・定時になったら思い切って帰る勇気をもつ

7-2. 労働基準監督署に相談する

効率よく仕事ができるよう工夫しても仕事を増やされる、業務量の管理をしてもらえないなど、会社の体質が長時間残業を生んでいるケースも珍しくありません。そのようなときは、外部への相談も効果的です。

労働基準監督署への相談を検討してみましょう。労働基準監督署は、会社が労働関係の法律に則って雇用を実施しているか監督するのが役割です。そのため、労働基準監督署が違法だと判断した企業には是正勧告が行われます。ただし、相談したすべてのケースで調査が行われるわけではないことも覚えておきましょう。

7-3. 転職する

どんなに工夫をしても残業を減らせない、職場に訴えても改善されない場合は、残業の少ない業界や会社へ転職するのもひとつの方法です。

最近では転職することは珍しくなくなり、経歴に傷がつくことも少ないでしょう。ただし、転職を機に残業時間が増えてしまっては意味がありません。転職先を探す際には、残業時間もひとつの指標にしましょう。実際にその企業で働いている方に話を聞くのがおすすめです。

8. まとめ


月60時間の残業について、ポイントをまとめてみましょう。

・60時間の残業は、平均よりかなり多い
・残業代の未払いがある場合は額が大きくなっている可能性が高い
・未払いの残業代は請求できる
・残業代請求は弁護士に任せるのがおすすめ

ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功/不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るか分からない中で、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。

そんな方におすすめなのが『アテラ 残業代』です。
①『アテラ 残業代』では、弁護士の着手金を立替えてくれるので、お手元から現金を出さずに、弁護士に着手金を払って依頼することができます。
②さらに、『アテラ 残業代』を利用すると、敗訴した場合や会社からお金を回収できなかった場合には、立替えてもらった着手金を実質返済する必要がないので、リスク0で残業代請求を行うことができます。
残業代請求をするときのリスクは、最初の着手金を支払うことで敗訴したときに収支がマイナスになってしまうことですが、『アテラ 残業代』を利用することでそのリスクがなくなります。

着手金にお困りの方、残業代請求のリスクをゼロにしたい方は、ぜひ『アテラ 残業代』をご利用ください。

なお、着手金支払いの負担・リスクではなく、どの弁護士に頼むかでお悩みの方は、ぜひ株式会社日本リーガルネットワークが運営するWebサイト『残業代・解雇弁護士サーチ』の弁護士検索機能をご利用ください。

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