2020/03/04

【弁護士監修】30分単位の残業代計算は違法?残業代の正しい計算方法とは?

執筆者 編集部
残業代関連

残業代の未払いは明らかに違法という意識はあるものの、「30分単位で残業代が支払われているから問題ない」と考えている方もいるのではないでしょうか。しかし、30分未満の残業時間を切り捨てるのは違法であり、切り捨てた時間分の残業代も請求する権利があります。

そこでこの記事では、残業代の正しい計算方法についてご紹介します。未払いの残業代を請求できるケースや請求方法も解説するので、会社の違法行為に対して正しく対処できるようになります。ぜひ参考にしてみてください。
 

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

1. 30分単位で残業代を切り捨てるのは違法!


残業時間を記録する際、15分単位や30分単位で切り捨てているという会社もあるのではないでしょうか。あまり問題視されていませんが、1日単位の残業代を計算する際に30分未満の残業時間を切り捨てることは違法です。

たとえば、18時が定時という方が18時23分まで仕事をした場合、23分を切り捨てて残業時間を0分とすることは違法になります。18時35分まで働いたときの残業時間を30分とするのも同様です。それぞれ23分、35分を残業時間として記録するのが正しい対応といえます。

一方、1か月単位の計算で30分未満の残業時間を切り捨て、30分以上の残業時間を切り上げることは認められています。たとえば、1か月の残業時間が20時間29分だった場合、29分を切り捨てて20時間としても問題ありません。

2. 残業の定義と残業時間の正しい計算方法


残業に関して基本となる考え方は労働基準法第32条に定められています。「1週間に40時間以上労働させてはならない」「1日に8時間以上労働させてはならない」という内容が残業について考える際に重要となります。ここでは、法律上の残業の定義と残業時間の正しい計算方法についてご紹介します。

2-1. 残業と割増賃金について

労働基準法第32条では、1日8時間、1週間40時間を法定労働時間と定めています。これを超える労働が「時間外労働」で、法律上の残業となります。

時間外労働に対して、会社は割増賃金を支払う義務があります。割増賃金の計算には、各種手当を含めた月給を1か月の所定労働時間で割った1時間あたりの基礎賃金を利用します。時間外労働の割増賃金は、1時間あたりの基礎賃金に25パーセントを上乗せした額です。たとえば、1時間あたりの基礎賃金が2,000円の場合、割増賃金は2,500円になります。

また、午後10時から翌日午前5時の労働は「深夜労働」、法定休日に出社した場合は「休日労働」にあたり、それぞれ25パーセント、35パーセントを上乗せした割増賃金が支払われます。

2-2. 1日単位で計算する場合

残業時間や残業代の計算方法を具体的に見ていきましょう。残業時間を1日単位で計算する場合、8時間を1分超えた時点からカウントが始まります。たとえば、8時間45分働くと残業時間は45分=0.75時間です。1時間あたりの基礎賃金が2,000円の場合、2,000円×1.25×0.75時間=1,875円の残業代が発生します。

1日単位の残業代は1分ごとに計算するので、8時間を超えた時間に関しては1分あたり42円の残業代が支払われます。ただし、小数点以下は50銭未満なら切り捨て、50銭以上は切り上げます。

2-3. 1か月単位で計算する場合

次に1か月単位の計算方法です。1か月単位で残業時間や残業代を計算する場合、30分以上を切り上げるのであれば、30分未満は切り捨てても問題ありません。1か月で20時間29分残業した方の残業時間を20時間とすることは認められています。1時間あたりの基礎賃金を2,000円とすると、2,000円×1.25×20時間=5万円が1か月の残業代になります。

1分単位の端数があると会社の事務処理が複雑になること、また、1か月単位の計算であれば30分未満を切り捨てても労働者の不利益もそこまで大きくないことから、行政通達で認められています。

2-4. どちらも切り上げは可能

1日単位の残業代も1か月単位の残業代も、切り上げて計算することは可能です。1日単位の計算で、15分の残業時間を切り捨てて0分とするのは違法ですが、切り上げて30分とするのは問題ありません。違法になるのは、あくまで労働者が不利益を被る場合です。

労働基準法第2条に「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」と明記されており、残業代について労働者が有利になるように取り計らう分には問題がないといえるでしょう。

 

3. 間違った計算方法の場合はどうなる?

ここまで、残業代の計算方法について具体例を交えて解説しましたが、実際の残業代の計算はさらに複雑です。時間外労働だけでなく休日労働や深夜労働が加わると、割増賃金の額が異なるため、かなり煩雑な計算になります。事実、2019年12月10日に報道されたセブンイレブンジャパンの残業代未払い問題のように会社側の計算ミスで間違った残業代が支給されているケースもあるようです。

ここでは、残業代の計算を間違えた場合や支払わないときの会社の刑事責任について見ていきます。

3-1. 労働者は労働基準法で守られている

「労働基準法」は労働者を守るために作られた法律で、残業代についても書かれています。労働者は使用者である会社と比べると立場が弱く、賃金や労働時間の面で不利な条件で働かされる場合があります。

労働基準法では、労働条件は労働者と使用者が「対等の立場」(労働基準法第2条)で決定すべきことを基本ルールとしたうえで、労働契約や労働現場で発生するさまざまな問題の解決の目安を定めています。また、立場が弱くなりがちな労働者の味方となる方向性で作られているのが特徴です。

労働者は労働基準法に守られていると意識するだけでも、残業代の問題解決への意識が強くなるでしょう。

3-2. 残業代を払わないと違反となる

残業代の未払いは、割増賃金の支払いを義務付ける労働基準法第37条違反になります。
また、労働基準法第24条にも違反します。労働基準法第24条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めており、ここでいう「賃金」には残業代も含まれます。残業代が発生しているにもかかわらず支払わない、または一部しか支払わないというケースは、労働基準法第24条違反になります。

つまり、残業代の未払いについて考える際には、労働基準法第32条、第37条、第24条を参考にしましょう。まずは第32条で定めている法定労働時間を超過していないかどうかを確認します。そして、残業をしているのに残業代が支払われてない場合には、第37条、第24条に違反していると判断できます。

3-3. 残業時間の上限規制をみなし残業が上回っている

たかが残業代と思う方もいるかもしれませんが、労働基準法第32条、第37条、第24条に違反した場合、会社の役員が罪に問われる恐れがあります。

労働基準法第119条には、労働基準法第32条、第37条に違反すると「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する」と書かれています。また、労働基準法第120条は、労働基準法第24条違反について「30万円以下の罰金に処する」と定めています。実際に会社が検挙されるかどうかは別ですが、法律上は罪を犯しているといえるでしょう。

労働基準監督署が労働基準法違反を検知した場合、まずは是正の勧告がなされます。それでも是正しないときには、会社が書類送検されることは十分にありえます。

3-4. 違反した際の罪の重さは?

労働基準法第32条、第37条、第24条に違反すると、第119条と第120条で定められたとおり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される場合があります。

懲役となった場合、使用者(労働基準法第10条)が懲役刑を受けます。具体的には、会社の社長といった人物が使用者に該当します。最高で半年間刑務所に入れられる可能性があると考えると、残業代を支払わない罪の大きさが実感できるでしょう。

一方、罰金刑は最高30万円で、会社にとってはあまりダメージのない金額に感じるかもしれません。しかし、刑罰を受けるということは前科となるので、公的な助成金を受けられなくなったり銀行融資が通らなくなったりと会社としては致命的な損失を被ることがあります。

 

4. 残業代の請求ができるケース


会社の刑事責任を追及することも大事ですが、どのような場合に未払いの残業代を請求できるのか気になる方も多いでしょう。残業代の請求できるケースは大きく3つに分けられます。ここでは、それぞれの内容について詳しく見ていきます。

4-1. 30分単位など労働時間の端数が切り捨てられている

1日の労働時間は1分単位で計算します。そのため、「30分までの残業は残業時間としない」といった就労規則は認められません。15分、10分といった単位で労働時間の端数を切り捨てたり四捨五入したりするのも違法です。法定労働時間を超えた時間なら、たとえ1分でも残業時間になります。

正しい残業代を求めるためには、毎日1分単位で労働時間を記録して1か月の合計を算出しましょう。今まで切り捨てられていた1日10分の残業時間も、20日働けば200分=3時間20分になります。

ただし、1か月の総残業時間に関しては30分以上を切り上げる代わりに30分未満を切り捨てることが認められているので、実際の支給額と比べる際には注意が必要です。

4-2. 残業の上限時間が決められている

「1か月の残業時間は○○時間までで、それ以上働いた分は勝手にやったのだから残業代は支払わない」といったケースも残業代が請求できます。

上限時間を設けていたとしても、設定された時間内で残業しているなら問題ありません。しかし、実際は上限時間を超えて働いている場合もあるでしょう。

使用者がはっきりと残業を命じていなくても、残業していることを知って黙認していた場合には「黙示の残業命令」があったものと見なされ、残業代の支払義務が発生します。また、通常の勤務時間内には終わらない質や量の仕事を命じた場合も同様です。「勝手にやった」という言い分は通じません。

上限時間を超えた仕事は残業代が出ないとわかっているので、労働者はできれば早く帰りたいと考えるでしょう。にもかかわらず残業しているということは、黙示の残業命令があった可能性があります。労働時間に応じた残業代を請求しましょう。

4-3. 固定残業代以上の残業をした

「1か月実際の残業時間にかかわらず、一律の金額を固定残業代として支払う場合があります。固定残業代にはすべての残業代が含まれているから、いくら残業しても残業代の請求はできないと考えている方もいるのではないでしょうか。

しかし、実際の労働時間に基づいて計算した残業代が固定残業代よりも多かった場合、不足額を請求できます。たとえば、「固定残業代の範囲は20時間まで」と就労規則で決められていたなら、20時間を超えた残業時間については残業代を支払う義務があります。

逆に、固定残業代のほうが実際の労働時間に基づいて計算した残業代よりも多かった場合、その差額を返還する必要はありません。また、「先月は固定残業代のほうが多かったから、今月の不足分は相殺しよう」といったこともできません。

 

5. 未払いの残業代!正しい請求方法とは?

未払いの残業代があると判明したら、実際に請求しましょう。残業代は労働の正当な対価です。とはいえ、労働者が会社を相手に交渉するのは簡単ではありません。ここでは、証拠集めや交渉の方法といった具体的な請求方法について解説します。

5-1. まずは証拠を揃える

会社に対して残業代を請求する場合、何よりも重要となるのは客観的な証拠です。まずは、雇用契約書や就労規則を手に入れます。特に、残業を30分単位とすることがはっきりと書かれている部分を探しましょう。

さらに、勤務記録や給与明細を用意します。特に、勤務記録は重要です。所定労働時間以外の時間に会社にいたことや30分未満の残業時間を切り捨てていたことを証明する直接的な証拠となります。

ただし、退社したと記録させた上で、さらに残業を命じる会社もあります。このような場合には実際の労働時間を正確に記録しておきましょう。所定労働時間外に会社にいたことの証拠として、会社の時計をスマートフォンで撮影したり、スマホアプリでGPS記録を作成しておくと効果的です。

5-2. 会社と交渉

証拠が揃ったら残業代の支払いについて会社と交渉してみましょう。30分単位の残業代の計算方法は違法であることを伝えたり、正しい計算結果を示したりして残業代に関しての改善を要求します。

5-3. 弁護士や法律関係の事務所に相談

個人で会社と交渉するのは難しいと感じたときには、専門家に相談するのもひとつの方法です。法律問題の代理交渉というと、まず思いつくのは弁護士でしょう。また、簡易裁判所の代理権が認められている司法書士(認定司法書士)や一定の社会保険労務士(特定社労士)も巨額の残業代請求でなければ代理人になれるので解決が図れます。

弁護士や法律関係の事務所に相談に行く際には、自分で集めた証拠を持参するとよいでしょう。法律のプロの知識、交渉技術、そして訴訟の可能性も含めて残業代の支払い請求を委任すれば、スムーズな解決が期待できます。

5-4. 労働基準監督署に相談する手もある

労働基準監督署は労働法令違反について取締りを行う機関です。残業代の未払いといった労働法令違反があれば、立ち入り調査が入ります。

労働基準監督署への相談は、窓口やメールでできます。その際、相談した旨を会社には伝えないで欲しいと要望することも可能です。

労働基準監督署が立ち入り検査を行うと、会社に対して調査結果に応じた是正の勧告を行います。30分単位の残業代の計算は明らかに違法なので、改善される可能性が高いといえるでしょう。

ただし、立ち入り検査や是正勧告を行うかどうかは公的な判断になるため、必ず何らかの処分や対応をしてくれるとは限りません。また、会社の不正を正すという意味合いが強く、残業代の支払いを求める上ではあまり効果的ではないかもしれません。申告から調査までに時間がかかるのも大きなデメリットです。

 

6. まとめ


30分単位で残業代を計算するのは違法で、1分単位で計算するのが正しいことは理解していただけましたでしょうか。実際に支払われている残業代と自分で計算した結果が異なるという方もいるかもしれません。残業代の請求は2年以内なら可能なので、早めに動くことが肝心です。

また、正しい残業代を請求するには、証拠を揃えて弁護士や法律関係の事務所に相談することをおすすめします。
ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るかわからない中で、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。

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