2020/02/07

【弁護士監修】残業時間は何分単位で計算される?正しい残業代を請求するためにするべきこと

執筆者 編集部
残業代関連

残業を頑張っている人のなかには「労働時間と収入が見合っていない」と感じている人もいるのではないでしょうか。
残業時間の計算は「30分未満は切り捨て」「遅刻をしたらノーカウント」など、企業によってルールがさまざまです。しかし、なかには知らずに違法な労働条件に従っている場合もあります。
そこでこの記事では、残業時間がどのように計算されているのかを解説します。合わせて、残業に関する法律もご紹介します。

正しい労働条件を把握することで、自分の残業時間や残業代が正当かどうか判断できるでしょう。
さらに法を盾にすることで、しっかりと残業した報酬を請求できます。まずは、残業時間について理解を深めていきましょう。
 

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

1. 残業時間は何分単位で計算される?



残業時間は「分単位」や「1日単位」「1カ月単位」と労働契約によって異なります。ここでは、就労スタイルで異なる残業時間の計算方法をご紹介します。一般的には、就労規則に残業に関する規定が記されていますので、自分の残業がどのように扱われているのか確認してみるとよいでしょう。

1-1. 残業時間の計算方法とは?

労働基準法では、働いた時間分の報酬の支払いを義務付けており、残業時間は1分単位で計算するのが原則的なルールです。そのため「15分以下は切り捨て」や「30分以下は切り捨て」というやり方は認められません。これは、労働対価を全額支払っていないことになるので、法律違反となります。
ただし、すべての従業員の残業時間を1分単位で計算するというのは、事務処理の量から考えてあまり現実的ではありません。そのため、残業時間を1カ月分でまとめ、30分単位で四捨五入することは例外的に認められています。

1-2. 1日単位で計算する場合

前項で解説した「30分単位での端数切り捨て」は、1カ月ごとに賃金を支払う場合にのみ認められているルールです。そのため、日当で報酬を受け取っている人には、1分単位で1日の残業時間を計算して全額を支払わなくてはなりません。
しかし、労働者側にとって不利でなければ1分単位でなくとも問題はありません。例えば30分未満であっても、切り捨てではなく「切り上げ」で計算することは認められます。ただし、切り上げる方法は会社側のサービスでもありますので、労働者側から切り上げを求めることはできません。

1-3. 1カ月単位で計算する場合

一般的には、年俸制であっても1カ月ごとに給与が支給されることが多いでしょう。月々給与を受け取る人は、残業代も1カ月ごとに計算して請求します。残業時間を計算して、合算した数字に30分未満の端数があるときには、四捨五入して残業時間を計算することが認められています。
具体的には、1カ月当たりで残業時間を合計したときに、30分未満の端数については切り捨てし、30分以上については1時間として切り上げるというルールです。「1日当たりでは端数切り上げ・切り捨ては違法、1カ月あたりでは合法」と理解しておきましょう。

1-4. 例でみる残業時間の求め方

実際に、月給で仕事をしている人の例で残業代を計算してみましょう。例えば、次のような形で1カ月間仕事をしたとします。

・月給:30万円
・諸手当:5万円
・勤務時間(定時):9時~18時(実働8時間)
・実際に働いた時間:8時30分~18時40分
・1カ月間の出勤日数:22日間

1日当たりの残業時間は1時間10分(70分間)ですので、22日間合計で25時間40分の残業時間となります。
(1分単位に直すと、1日あたりの残業時間が「70分」、22日間で「1540分」です。)

1カ月あたりで残業時間を計算するときには、30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げで計算できます。
そのため、1カ月間の残業時間は26時間となります。

次に残業代の金額ですが、残業手当は、25%の割増賃金を支払うことが法律で義務づけられていますので、時給(1時間あたりの基礎賃金)に25%をのせて残業代を算出します。

1時間当たりの基礎賃金は、(月給−諸手当)÷1カ月の平均所定労働時間で求めます。
そのため今回の例では、(月給30万円−諸手当5万円)÷1カ月の平均所定労働時間168時間=1,488円が1時間あたりの基礎賃金です。

残業手当の割増率は25%なので「時給(1時間あたりの基礎賃金)1,488円×割増賃金率1.25倍×残業時間26時間=48,360円」と計算できます。

もしも、残業代が支給されていない違法な状態が慢性化していたとすると、月間で48,360円、年間では580,320円もの残業代が支給されていないということなります。

2. 労働基準法に違反した場合はどうなる?



残業代計算のルールは、労働基準法という法律で決まっています。労働基準法に違反した状態で従業員を働かせていることが明らかになった場合、その会社に対しては行政からの指導が入る可能性があります。
この項目では「労働基準法に違反している会社がどのようなリスクを抱えているのか」について解説します。

2-1. 労働基準法とは?

労働基準法は、働く人の権利を守ために制定された法律です。企業(雇用主)と労働者とは「雇用契約」によって「企業は賃金という形でお金を払い、労働者はその分だけ働く」という約束をしています。
企業と労働者だけで自由に契約を結んでしまいたいところですが、何も規制が無ければ、立場が強い企業側に一方的な内容の雇用契約が締結されてしまいます。そのような労働者が不利になることを避けるために、国は「労働基準法」という法律によって労働者を守るルールを企業に課しています。

2-2. 残業代を払わないと違反になる

残業代についても、労働基準法によって「全額を支払わなければならない」というルールが定められています。具体的には労働基準法第24条に以下のような記述があります。

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」

条文後半の「その全額を支払わなければならない」とは、具体的には「1分単位で残業代を計算して残らず支給しなさい」ということです。
ただし、月給で賃金を計算している場合には、月の合計残業時間のうち30分未満については切り捨てることができるルールになっていることは、先に解説したとおりです。

2-3. 違反すると罪に問われる?

労働基準法に違反していることが明らかになった場合「労働基準監督署」という役所から、企業に対して是正勧告がなされることがあります。
是正勧告とは、サッカーでいうところの「イエローカード」のようなものです。是正勧告は法律的には行政指導ですので、もし従わなかったとしても刑事罰が課せられることはありません。
しかし、是正勧告をたびたび受けているにもかかわらず職場の環境を改めることがなかった場合には、会社に刑事罰が科せられ、書類送検を受ける可能性があります。

2-4. 違反した際の罪の重さは?

労働基準法に違反して刑事罰を受ける場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。刑事罰を受けた企業は、世論から非難を受ける可能性があります。
昨今はSNSなどで情報共有がすぐにできてしまうので、取引先の開拓や新入社員の採用活動で大きなダメージを受けるケースが少なくありません。違反した後のリスクを考慮した経営体制も重要です。

3. 正しい残業代を請求!残業を1分単位で計算してもらうには?


ここまで、労働基準法で決まっている残業代計算に関するルールについて解説しました。基本的にはきちんと法に沿って労働環境が用意されているはずですが、人手不足となりがちな中小企業では「残業代を少ない固定額で支給する」「一日ごとに残業代を計算して分単位を切り捨てる」「遅刻や早退に対する制裁として残業代をカットする」というような企業の主観でルールを設けているところも少なくありません。

こうした違法な状態は、残業代請求によって解決できる可能性があります。実際、長年にわたって残業代が支給されていなかった職場に対して残業代請求をまとめて行い、数百万円単位の残業代が支給されるようなケースもあります。
以下では、残業代請求を成功させるにはどのような対策をしていけばいいのかを解説します。残業をしているのに給料が少ないという不満をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。

3-1. まずは証拠を揃える

残業代請求を行うためには、まずは「どれだけの残業時間が発生しているのか」を確定し「実際に支払われた賃金といくらの差額があるのか」を明確にする必要があります。
そのためには、残業代計算の基礎となる証拠を揃えなくてはなりません。残業代の発生を証拠づけるものとしては以下のようなものが挙げられますので、準備しましょう。
・就業規則
・雇用契約書
・勤怠記録や給与明細など

3-2. 会社と交渉

証拠に基づいて残業時間を計算し、実際の賃金額と差があることがわかったら、いよいよ会社と交渉を行います。
過去に支払われていない残業代を請求するとともに、今後の改善を要求することになります。従業員の立場でこうした主張を行うことは、逆にあなたの職場内での立場を悪くしてしまう可能性もありますが、会社側の義務もありますので堂々と交渉しましょう。
ただし、残業代の請求をした結果、職場に居づらくなって退職を余儀なくされた……などということになれば本末転倒ですから、会社側との交渉は慎重に行うようにしましょう。

3-3. 弁護士や法律関係の事務所に相談

会社との信頼関係を決定的に破壊してしまわないようにするためには、労働問題に詳しい専門家に間に入ってもらうのが適切です。
労働法に違反した状況というのは会社にとってもリスクがある状況ですから、現状どのような問題が生じているのかを専門家の立場で説明していけば、会社側も柔軟に対応してくれる可能性があります。

3-4. 労働基準監督署に相談

会社側との交渉がどうしてもうまくいかない場合には、労働基準監督署に相談することも選択肢に入れましょう。労働基準監督署は、是正勧告などの形で職場環境の改善について働きかけてくれる可能性があります。
ただし、労働基準監督署に調査のために動いてもらうためには通常長い時間がかかります。また、肝心の是正勧告は法的な強制力はありませんので、これによって必ず会社側が態度を改めてくれるというわけでもありません。
労働基準監督署への相談はあくまでも事前の策と位置付けて、基本的には弁護士を介して法律に基づく請求を行っていくのが良いでしょう。

4. 残業代を請求するときの注意点


ここでは、残業代の請求をするときに注意しておくべきポイントについて解説します。大切なのは「残業代請求を行える権利の「時効」について理解しておくこと」「労働法の専門家への相談を検討しておくこと」の2点です。以下で順番に解説します。

4-1. 残業代請求の権利は2年で失効する

残業代を請求する権利は、2年間放置し続けていると失効してしまいます。特に、退職後に残業代請求を行う場合には注意が必要です。
しかし、時効は中断を行うことが可能です。文書を通じて会社側に「これだけの残業代が未払いになっているので、支払って欲しい」と請求を行っておけば、その時点で時効の進行を中断することが可能です。
文書による時効の中断については法的知識が必要ですので、実際に時効中断を行う場合には、弁護士に相談して行うのが良いでしょう。

4-2. 弁護士をつける

残業代請求をこれから行うことを考えている人は、ぜひ労働問題を専門としている弁護士に相談することを検討しましょう。
弁護士は労働法についての専門家であるだけでなく、交渉ごとのプロでもあります。証拠書類の収集や残業代計算についてミスを防ぐことができるほか、会社に対して弁護士経由で請求を行うことによって「もし交渉に応じない場合には訴訟になる」というリスクを感じさせることができます。
残業代請求は、専門の弁護士に依頼をするかどうかによって精神的負担が変わります。早めに相談して悩みを解決することで、次の仕事がスムーズにはかどるでしょう。

5. まとめ


この記事では、残業時間の計算方法について、具体的な例を用いて解説しました。
働き方改革関連法案の成立をきっかけとして、企業の残業についての意識は変わりつつあります。
しかし、日本人の気質的にサービス残業が定番のところも少なくありません。

会社に対して残業代の請求を行う際には、正しい計算方法で請求を行い、可能な限り良好な関係を維持できるように交渉を進めていくことが大切です。残業代の請求を考えている方は、ぜひ弁護士への相談を検討してみましょう。

ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るかわからない中で、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。

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