2018/11/24

間違いない!残業代計算の仕方③(弁護士監修、フレックスタイム制の場合)

執筆者 編集部
残業代関連

前回までの記事で、通常労働時間制変形労働時間制の場合の残業代計算の方法について書きましたが、今回はフレックスタイム制の場合の残業代計算の方法について紹介します。そもそもフレックスタイム制とは何のことなのかわからない、そんな方もいらっしゃると思いますので、そこから順を追って説明したいと思います。

1. フレックスタイム制とは

まず、フレックスタイム制とは何か説明したいと思います。

フレックスタイム制とは、簡単に言うと、労働者自身が出退勤の時間を決める制度です。

もう少し詳しく説明すると、会社が1日の労働時間を決めず、代わりに1か月以内の一定期間に働く総労働時間だけを決めておいて、その範囲内で労働者に自由に働かせるという制度のことです。フレックスタイム制のもとでは、労働者たちはどの日にどれくらい働くか自分で決めることができます。フレックスタイム制は、その性質上エンジニアやデザイナーなど個人での作業が多い職種の方に導入されることが多いです。

ここで注意していただきたいことは、フレックスタイム制においても、残業代が発生することがあるということです。フレックスタイム制では、出退勤の時刻を労働者が決めることができるといった点から、残業代は発生しないと勘違いされがちですが、実はそうではなく、残業代が発生することがあります。

先ほど「会社が1日の労働時間を決めず、代わりに1か月以内の一定期間に働く総労働時間を決める」と記述しましたように、フレックスタイム制では就業規則などで、「清算期間(せいさんきかん)」と「総労働時間」というものが決まっています。

「清算期間(せいさんきかん)」とは労働時間を計算するための1セットの期間です。1か月単位を清算期間として定めると、1か月ごとに労働時間が計算されます。

「総労働時間」は、清算期間中に何時間働くかという労働時間数のことです。この「総労働時間」には上限があり、「法定労働時間(ほうていろうどうじかん)の総枠※」を超えてはなりません。この「総労働時間」を超えて働いた時間が、フレックスタイム制における残業時間となります。

※ 法定労働時間の総枠…原則として40時間×清算期間の日数÷7で求められる。清算期間が31日間の場合は177.1時間、30日間の場合は171.4時間、29日間の場合は165.7時間、28日間の場合は160時間である。(特例が適用される場合は40時間ではなく44時間)

1-2. コアタイムとフレキシブルタイムとは

フレックスタイム制における残業代の計算方法を紹介する前に、コアタイムとフレキシブルタイムというものについて簡単に紹介しようと思います。

実はフレックスタイム制では、いつでも完全に自由な時間に働いてもよいというわけでは無い場合があります。どういうことかというと、この時間は必ず働かなくてはいけないという時間帯が決まっている場合があるということです。この、必ず働かなければならないと定められた時間帯のことを「コアタイム」といいます。

この、コアタイムを除いた部分は「フレキシブルタイム」と呼ばれる時間で、総労働時間の範囲内で、自由に時間を設定して働いてよいことになっています。

コアタイムは、フレックスタイム制において、労働者が完全にそれぞれの好きな時間、ばらばらな時間に出勤や退勤をすると、会社内での連携がうまくいかなくなってしまうため、その解決策として導入されています。

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2. フレックスタイム制での残業代の計算方法

それでは、フレックスタイム制の場合の残業代の計算方法について説明します。
フレックスタイム制の場合も、他の労働体制の場合と同様に

残業代=残業時間×1時間当たりの基礎賃金×割増率

の式で計算します。

2-1. フレックスタイム制における残業時間

フレックスタイム制では、先ほども説明したとおり「清算期間」(ほとんどの場合は1か月)ごとに、「総労働時間」を超えて働いた時間及び(清算期間が1か月を超える場合には)1か月の労働時間につき週平均50時間を超えた時間が、残業時間となります。また、フレックスタイム制においても、法定休日に働いた場合には、働いた全ての時間が残業時間(法定休日労働時間)になります。

※ 法定休日について:フレックスタイム制はあくまで可能な範囲で自由な時間に働くことができる制度であり、休日について自由に選択できる制度ではありません。少なくとも週1日、あるいは4週につき4日の「法定休日」を設けることが義務となっています。

2-2. フレックスタイム制における基礎賃金の計算

フレックスタイム制の1時間あたりの基礎賃金は、通常の勤務体系の場合や変形労働時間制の場合と同様に計算します。1時間あたりの基礎賃金は、普段の給料から決まる「基礎賃金」の額を、1時間あたりに割って計算します(詳しくは通常の勤務体系の記事をご覧ください)。

2-3. フレックスタイム制における残業代の割増率

フレックスタイム制における残業代の割増率において、法定労働時間の範囲内で総労働時間を超える部分(つまり会社で決められた総労働時間は超えているが、法定労働時間は超えていない部分)については、割増率を掛けることはありません。この場合は、その部分の時間に1時間あたりの基礎賃金を掛けた金額が、そのまま残業代の金額になります。ただし、これが深夜労働に該当する場合は、割増率1.25倍を掛けた金額が残業代になります。

法定労働時間の総枠を超える部分については、割増率が1.25倍(深夜労働でもある場合は1.5倍)になります。

また、中小企業ではない大企業においては、1か月あたりの法定労働時間を60時間以上超える部分の残業については、割増率が1.5倍(深夜労働でもある場合は1.75倍)になります(大企業の基準については、通常の勤務体系の場合の記事の4-2を参照してください)。

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<具体例>

1時間あたりの基礎賃金が1400円で、清算期間は1か月ごととされている人を例にとって考えてみます。

この人が、清算期間が28日間、清算期間中の総労働時間が155時間となる月に、170時間働いたとします。(法定休日の労働時間や深夜の労働時間はないものとします。)

この場合、法定労働時間の総枠は160時間となります。したがって、法定労働時間の総枠の範囲内で総労働時間を超える部分は5時間、法定労働時間の総枠を超える部分は10時間となります。

したがって、この場合、

1400円×5時間=7000円(法定労働時間の総枠内の残業)

1400円×10時間×1.25=17500円(法定労働時間の総枠を超える残業)

→7000円+17500円=2万4500円(合計)

の残業代が発生することとなります。

※ 法定労働時間内の残業の場合も、深夜労働にあたる場合は割増率は1.25倍。また、法定休日に働いた時間は、割増率が1.35倍(深夜労働でもある場合は1.6倍)となります。

(2020年4月21日更新)

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