2018/11/13

間違いない!残業代計算の仕方(弁護士監修、定時が毎日同じ勤務の場合)

執筆者 編集部
残業代関連

残業をして、会社から支払われた残業代・残業手当が、法律上の残業代よりも少なかったとき、あるいはそれらが全く支払われなかったときには、会社に対して不足している額を請求することができます。

しかし、法律上の残業代の正しい計算方法について理解している方は少ないのではないのでしょうか。

今回は、正しい残業代の計算方法について解説します。また、会社の規則上の所定労働時間の定め方には種類がありますが、ここでは一般的な定時が毎日同じ勤務の方の場合の計算方法について説明していきます。

1. 基本的な残業代の計算式

基本的に残業代は、

残業代=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率

という式で計算します。それぞれについて以下で簡単に説明します。

残業時間…「所定労働時間」を超える労働時間(「所定労働時間」については2参照)
1時間当たりの基礎賃金…残業1時間につき、基本的に何円もらえるかという金額のこと。(詳しくは3参照)
割増率…法定労働時間(1日8時間、1週間で合計40時間等)を超えた残業、深夜(午後10時から午前5時まで)の残業、法定休日の残業によって基礎賃金に上乗せとなる率のこと。(詳しくは4参照)

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2. 残業時間とは

残業代を計算する際、まずは残業時間が何時間なのか計算する必要があります。「残業時間」とは、「所定労働時間」を超える労働時間であると、1でも書きましたが、ここではもう少し詳しくそのことについて説明します。

まず、所定労働時間とは、”会社が定めた”労働者が働くことを決められている時間のことを指します。通常の労働時間制では、必ず1日あたりの労働時間を定めなければいけません。また、この所定労働時間は法律の上限を超えて設定してはいけないことになっています。

上限は1日8時間、1週間で合計40時間(※)となっています。また、この1日8時間、1週間で合計40時間の労働時間を「法定労働時間(ほうていろうどうじかん)」といいます。

基本的には、所定労働時間を超えて働いた時間が、残業時間となります。仮に、所定労働時間が法定労働時間を上回って設定されている場合、これは無効となり、法定労働時間を超えて働いた分が残業時間となります。

※ 小売業等の小規模な事業場では、法定労働時間が1週間で合計40時間ではなく、1週間で合計44時間となる例外もあります。(これからの説明で「1週間で合計40時間」としている部分についても、基本的に同じです。)
1週間の法定労働時間が合計44時間となる業種とは、以下の業種です。
(1) 商業(卸売業、小売業、理美容業等)
(2) 映画・演劇業
(3) 保健衛生業(病院、診療所、保育園、老人ホーム等)
(4) 接客娯楽業(旅館、飲食店等)
また、法定労働時間が44時間となるのは、上記の業種の中で、1つの職場の労働者が10人未満である場合です。注意しなければならないのは、”1つの職場の”と書いているように、ここではあくまで、会社全体の従業員数は関係がないということです。

2-1. 休日の労働時間について

労働基準法には、1週間に1日(または4週間に4日)の休日を労働者に与えなければならないという決まりがあります。この決まりによって与えられた休日を「法定休日(ほうていきゅうじつ)」といいます。法定休日に働いたときは、その時間に関わらず全ての労働時間が残業時間(法定休日労働時間)となります。

例えば、休日が週1日の方は、その日が法定休日です。

週休2日以上の契約で働いているという場合は、就業規則などで、どの曜日が法定休日かが決まっていれば、その曜日が法定休日になります。特に法定休日かが決まっていない場合は、休日のいずれかが法定休日になります。

また、法定休日ではない休日における労働は、通常の勤務日における労働と同様に扱われます。

2-2. 36協定と残業時間について

会社が従業員に対して、法定労働時間を超える残業や法定休日の残業をさせるためには、原則として36協定(さぶろくきょうてい)の締結が必要です。36協定の正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。この届けを出さずに従業員を時間外労働させると、会社は罰則の対象となります。

また、36協定は、締結すれば制限なく残業をさせられるというものではなく、上限が決まっています。その上限は、原則として1か月あたり45時間以内となっています。(36協定に特別条項が定められている場合、45時間を超える場合があります)

ここで注意したいことは、残業時間と残業代は、実労働時間をもとに計算するので、36協定の範囲内の残業も、範囲を超えた残業も、残業代の計算をする際には関係がないということです。

残業代請求をした際に、「36協定の範囲内の残業だから、残業代は払えない」、「36協定の範囲を超えた残業代は払えない」等の言い訳をする悪質な会社がありますが、これらは間違いであり、残業した時間だけ残業代は貰えますので、参考にしていただくといいと思います。また、仮に会社が36協定を締結していなくても、残業をした場合、残業代はもらえるということもあわせて知っておいていただきたいです。

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3. 1時間あたりの基礎賃金の計算

次は、1時間あたりの基礎賃金の計算方法です。

基礎賃金とは、1に記述しましたが、基本的に残業1時間あたりに、もらえる金額のことであり、言い換えると「時給」のようなものです。

1時間あたりの基礎賃金は、普段の給料求めた「基礎賃金(きそちんぎん)」の額を、1時間あたりに割って、計算します。具体的な計算方法については、3-2で説明します。

3-1. 基礎賃金には基本給と一部の手当が含まれる

基礎賃金は、普段もらっている給料の額によって決まります。ただし、その計算において給料のすべてが含まれるわけではありません。一部の手当・ボーナスなどは、普段の給料の額から差し引かなければなりません。計算から差し引かれる対象となるのは、次のようなものです。

  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス)
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 家族手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 臨時に支払われた賃金

注意するべきなのは、各種手当やボーナスという名前なら必ず基礎賃金から差し引かれるわけではないということです。基礎賃金から差し引かれるには、現実に各種手当やボーナスとしての実態があるということが必須条件だからです。だから、実質的な基本給が交通費などに付け替えられても、残業代の金額が減ることはありません。

もっと詳しく書くと、「実態がない」場合とは、例えば、実際の通勤費用が何円かに関係なく、全員に通勤手当2万円を給付をしているような場合のことです。残業代の計算上、誰かれ構わず支給をされているようなものは、手当とは認めないということです。

3-2. 基礎賃金の具体的な計算方法

基礎賃金の金額が把握できたら、次に、1時間あたりの基礎賃金を計算します。

月給制の場合は、月の基礎賃金を、所定労働時間で割ります。ただし、その月によって所定労働日数や休日の数は異なるため、1か月間の所定労働時間は毎月違うのが通常です。この場合、1か月間の所定労働時間を、1年間の平均から求めます。

<具体例>
月給26万4000円、就業規則上は1日8時間労働で土日祝日、年始(1月3日まで)、年末(12月29日以降)が休み(一般的な会社・企業に多いと思います)の場合を考えてみます。2018年の1年間の勤務日数は245日(休みが120日)で、1年間の所定労働時間(就業規則上の労働時間)は、8時間×245日=1960時間となります。したがって、1か月の所定労働時間は、1960時間÷12か月=約163時間となり、1時間あたりの基礎賃金は、26万4000円÷163時間=約1620円となります。

この計算は、年俸制の場合も、基本的には月給制の場合と同じです。年俸制の場合、年棒を就業規則などで決まっている1年間の労働時間(所定労働時間)で割って、1時間あたりの基礎賃金を求めます。年俸制だから残業代を請求できないということはありません

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4. 残業代の割増率

次は、割増率についてです。割増率(わりましりつ)は、

・法定労働時間(1日8時間、1週間で合計40時間)を超えた残業かどうか
・深夜(午後10時から午前5時まで)の残業かどうか
・法定休日の残業かどうか
によって異なる率が定められています。

4-1. 法定労働時間を超える残業の場合

実際の労働時間が法定労働時間(1日8時間、1週間で合計40時間)を超えた場合、法定労働時間を超えた分の残業については、割増率を1.25倍として残業代を計算します。

<具体例>
1時間あたりの基礎賃金が1800円の人が、月曜日に9時間、火曜日に11時間、水曜日に8時間、木曜日に8時間、金曜日に9時間、土曜日に3時間働いた場合を考えてみます。

所定労働時間は1日8時間、1週間で合計40時間(法定労働時間と同じ)とします。また、法定休日は日曜日とします。

この場合、月曜日の1時間分、火曜日の3時間分、金曜日の1時間分が、1日8時間の法定労働時間の上限を超えます。また、土曜日の3時間分も、1週間で合計40時間の法定労働時間の上限を超えます。したがって、これらの合計8時間が残業時間となり、この残業は法定労働時間外のものとなります。

したがって、この週の残業代は、1800円×8時間×1.25=1万8000円となります。

この法定労働時間外の残業が、深夜(午後10時から午前5時まで)である場合には、割増率を1.25倍ではなく1.5倍(深夜手当分の0.25上乗せ)として、残業代を計算します。

4-2. 法定労働時間を月60時間以上上回る残業の場合

大企業では、法定休日以外の残業時間が1か月あたり60時間を超えた場合、60時間を超えた分の残業については、割増率が高くなります

この場合、60時間を超える部分の割増率は1.5倍として計算します。深夜残業にも該当する場合には、割増率を1.75倍(深夜手当分の0.25上乗せ)として計算します。

<具体例>
1時間あたりの基礎賃金が1700円の人が、法定労働時間が176時間の月に、法定休日以外で281時間働いた場合を考えてみます。所定労働時間は法定労働時間と同じであるとします。この場合、残業時間は、281時間-176時間=105時間です。これは60時間を超えているため、105時間-60時間=45時間の部分については、割増率が1.5倍になります。したがって、残業代は、1700円×60時間×1.25=12万7500円(60時間以下の部分)ー①
1700円×45時間×1.5=11万4750円(60時間を超える部分)ー②
①+②は、12万7500円+11万4750円=24万2250円(合計)となります。

現段階では、この割増率の加算は、中小企業には当てはまらず、大企業だけが対象です。中小企業では、法定休日以外の残業時間が1か月あたり60時間を超えたとしても、割増率は1.25倍(深夜残業でもある場合は1.5倍)で変わりません。

割増率が変わらない中小企業は、以下の条件に該当する企業です。

小売業資本金5000万円以下、または、常時使用する労働者50人以下
サービス業資本金5000万円以下、または、常時使用する労働者100人以下
卸売業資本金1億円以下、または、常時使用する労働者100人以下
その他の事業資本金3億円以下、または、常時使用する労働者300人以下

※上記の労働者数は、企業全体での数であり、1つの営業所あたりの人数ではありません。

4-3. 法定休日の残業の場合

休日に働いた場合は、その休日が法定休日かどうかによって、割増率が異なります。法定休日に働いた時間は全て残業時間になります。

法定休日に働いた(残業した)場合、労働(残業)時間に1時間あたりの基礎賃金を掛けて、そこにさらに1.35倍<の割増率を掛けて、残業代を計算します。深夜残業にも該当する場合は、割増率を1.35倍ではなく1.6倍として、残業代を計算します。

法定休日以外の休日に働いた場合は、この割増率の対象ではなく、通常の勤務日における賃金・残業代の計算が適用されます。

4-4. 就業規則などに割増率の定めがある場合

ここまで説明してきた割増率は、雇用契約あるいは就業規則に、割増率に関する記載がない場合に適用される法定の割増率です。

もし、雇用契約や就業規則で、法定の割増率より高い割増率が決まっていれば、その割増率が残業代計算に適用されます。

しかし、雇用契約や就業規則に、割増率を法定の割増率を下回る値に設定するといった旨の記載があった場合は、その決まりは労基法によって無効とされます。このような場合には、法定の割増率で残業代が計算されることになります。

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5. 法定の時間内の残業の場合

所定労働時間は、上限の1日8時間、1週間で合計40時間の法定労働時間よりも短く定められている場合があります。(例:パート勤務など)

このような場合、所定労働時間分は超えているが、法定労働時間は超えていない残業が発生することがあります。例えば、週に25時間働く契約にもかかわらず、週に30時間働いたといった場合です。このような法定労働時間は超えていないけれど、所定労働時間分は超えた残業のことを、「法定内残業(ほうていないざんぎょう)」といいます。

法定内残業の残業代については、雇用契約や就業規則に記載があることも無いこともあります。

特別に記載がある場合には、基本的にはその規定に基づいて残業代を計算します。これに対して、書いていない場合には、法定内残業の場合は1.25倍の割増率を掛けることはありません。単純に、残業時間に1時間あたりの基礎賃金を掛けて、残業代を計算します。ここは、法定労働時間を超えた残業と異なるので注意してください。

<具体例>
1時間あたりの基礎賃金が1400円で、土日休みの週休2日、所定労働時間が1日6時間の人を例にとって考えてみます。なお、法定内残業の取り扱いが雇用契約や就業規則に書いていない場合とします。

この人が、月曜日に6時間、火曜日に7時間、水曜日に6時間、木曜日に10時間、金曜日に8時間、働いたとします。

この場合、木曜日の2時間分は法定労働時間(1日あたり8時間)を超えます。他方で、火曜日の1時間分、木曜日の2時間分、金曜日の2時間分については、所定労働時間は超えるものの、法定労働時間(1日あたり8時間、1週間あたり40時間)の範囲内です。

したがって、この場合、法定労働時間外の残業が2時間、法定内残業が5時間となるため、この週の残業代は、

1400円×2時間×1.25=3500円(法定労働時間外の残業)ー①
1400円×5時間=7000円(法定内残業)ー②

つまり、①+②で、3500円+7000円=1万500円(合計)となります。

法定内残業であっても、深夜残業に該当する場合には、1.25倍の割増率を掛けて、残業代を計算します。

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