2018/09/11

(弁護士監修)失業保険はいつから、いくらもらえる?残業時間が給付内容に影響する!?

執筆者 編集部
残業代関連

いわゆる失業保険について、本記事ではわかりやすく説明していきます。失業保険について知りたい方、過去に関連する資料やウェブサイトに目を通したけれど、十分な知識が得られなかったといった方のお役に立てればと思います。

1. 失業保険(失業手当)とはなにか、どんな場合にもらえるのか

いわゆる失業保険(失業手当)とは、正確には、雇用保険という制度から払われる手当の一種のことを指します。具体的には、雇用保険からの給付のうち、求職者給付のなかの基本手当を指します。

(雇用保険からの給付には、基本手当以外にも様々な給付があります。※1)

この基本手当(失業手当)は、働いているときに雇用保険に加入していた方が、自身が離職・失職した際に、一定の条件を満たすと受けられる給付です。基本手当は、一定の条件を満たさないと受給することは出来ません。受給ができる条件は、下記の①②の2点です。

①ハローワークに来所し、求職の申込を行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても職業に就くことが出来ない「失業の状態」にあること。

「いつでも就職できる能力があるにもかかわらず」と記載されているように、次に挙げられるようなときは、受給することが出来ません。

・病気や怪我のため、すぐに就職することが出来ないとき
・妊娠、出産、育児のため、すぐに就職することが出来ないとき
・定年などで退職してしばらく休養しようと考えているとき
・結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することが出来ないとき

②離職の日以前の2年間に、被保険者期間(雇用保険に加入していた期間)※2 が通算して12か月以上あること。ただし、特定受給資格者あるいは特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合(特定受給資格者・特定理由離職者については、2(4)・2(6)をご覧ください。

※1 雇用保険からの給付の一覧は、以下のとおりです。

1.求職者給付
⑴基本手当(いわゆる失業保険)
⑵技能習得手当、寄宿手当、傷病手当
⑶高齢者求職者、短期雇用特例一時金、日雇労働求職者一時金
2.就職促進給付
3.教育訓練給付
4.雇用継続給付

※2 ”被保険者期間”は、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職の日から1か月ごとに区切っていた期間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。

2. 失業保険(基本手当)がもらえる期間と受給者の分類

2-1. 人によって受給できる時期や期間が異なる

失業保険は受給者(失業者の方)の分類によって、いつから受給できるかや、受給できる期間に大きな差があります。受給者の分類には下記の4つがあります。

①一般離職者(自己都合退職)
②特定受給資格者(会社都合退職。2(4)で説明)
③特定理由離職者(2(6)で説明)
④就職困難者※

※ 就職困難者とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、刑法等の規定により保護観察に付された方、社会的事情により就職が著しく阻害されている人などが該当します。

2-2. いつから失業保険を受給できるか

2-1.で記載したように、失業保険(基本手当)は受給者の分類によって、受給ができるようになるまでの期間が異なります。以下の表は、受給者の分類別にいつから受給ができるかまとめものです。

受給者の分類いつから受給できるか
一般離職者(自己都合退職)7日間の待期期間と3か月の給付制限期間の後から
特定受給資格者(会社都合退職)待期期間7日間の後から
特定理由離職者待期期間7日間の後から
就職困難者待期期間7日間の後から

上の表からわかるように、自己都合による一般離職者については、7日間の待期期間に加えて3か月の給付制限があります。他方で、その他3つの分類の受給者は、待期期間7日間が経過したら基本手当の受給をすることが出来ます。

※ 待期期間:離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間を待期期間といい、この期間が満了するまでは雇用保険の基本手当は支給されません。これは、離職の理由等にかかわらず、一律に適用されます。

※ 給付制限(離職理由による給付制限):正当な理由なく自己都合により退職した場合及び、自己に非があると認めざるを得ないような、重大な理由によって解雇された(いわゆる重責解雇)場合は、待期期間終了後、更に3か月間受給が制限されるという期間のこと。

※ なお、実際に雇用保険の基本手当として初めて現金が振り込まれるのは、給付制限のない方でも、公共職業安定所で求職の申込みをしてから数えて約1か月後(初回認定日の約1週間後)となります。

2-3. 失業保険がもらえる期間

前述したように、雇用保険の基本手当の給付日数は、受給者の分類と、年齢、雇用保険に加入していた期間(被保険者であった期間)によって決まります。これを所定給付日数といいます。受給者の分類ごとの基本手当がもらえる期間については、下の表をご覧ください。

A:一般離職者(自己都合退職)と特定理由離職者のうちB以外の方※

雇用保険に加入していた期間基本手当が受給できる期間
1年以上10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

B:特定受給資格者(会社都合退職)と特定理由離職者のうち雇い止めを受けた方

雇用保険に加入していた期間基本手当が受給できる期間
1年未満90日
1年以上5年未満
①30歳未満90日
②30歳以上35歳未満120日
③35歳以上45歳未満150日
④45歳以上60歳未満180日
⑤60歳以上65歳未満150日
5年以上10年未満
①30歳未満120日
②30歳以上35歳未満180日
③35歳以上45歳未満180日
④45歳以上60歳未満240日
⑤60歳以上65歳未満180日
10年以上20年未満
①30歳未満180日
②30歳以上35歳未満210日
③35歳以上45歳未満240日
④45歳以上60歳未満270日
⑤60歳以上65歳未満210日
20年以上
①30歳未満
②30歳以上35歳未満240日
③35歳以上45歳未満270日
④45歳以上60歳未満330日
⑤60歳以上65歳未満240日

就職困難者の方

雇用保険に加入していた期間基本手当が受給できる期間
1年未満150日
1年以上
①45歳未満300日
②45歳以上65歳未満360日

※ 特定理由離職者のうち、雇い止めを受けた方以外は、給付制限は免除されますが、給付日数に優遇は無く、一般離職者の方と同じです。

2-4. 特定受給資格者(会社都合退職)とは

特定受給資格者とは、大まかにいうと、倒産や解雇などの理由により、再就職をするための準備をする余裕なしに、離職を余儀なくされた人のことをいいます。特定受給資格者の詳しい範囲については、こちらで確認できます。

2-5. 残業時間が長いと特定受給資格者(会社都合退職)扱いになる

2-4.では細かく触れなかった特定受給資格者の条件の1つに、実は、”離職の直前6か月間のうち、①いずれか連続する3か月で45時間、あるいは②1か月で100時間、または③いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。”というものがあります。

この残業時間の条件を言い換えると、

①離職をする直前の6か月間の中で、45時間以上残業した月が連続で3か月以上あること または、
②離職をする直前の6か月間の中で、100時間以上残業した月が1度でもあること または、
③離職をする直前の6か月間の中で、連続する2か月以上の期間の、残業時間の平均が1か月あたり80時間を超えていること  となります。

つまり、上記のいずれかの条件に該当する、長時間の残業が原因で離職した方は、特定受給資格者(会社都合退職)として分類されるということです。特定受給資格者に選定されれば、一般離職者よりも有利な給付を受けることが出来ます。

しかし、特定受給資格者として認められるためには、(会社が長時間の残業を認めていない場合)残業の証拠が必要です。悪質な会社の場合は、タイムカード等で残業時間を実際より短く記録させる、あるいは残業していないかのように記録させて、残業の証拠を残さないようにしている場合もあります。

そんなときに、是非活用していただきたいのがザンレコという無料のスマホアプリです。このアプリは、GPSを用いて残業の証拠を自動で残すことができるアプリです。また、それだけでなく、残業代の計算も自動で行ってくれるので、未払い残業代の請求をする際にも使えます。ザンレコを使って、残業の証拠を残しておけば、あなたが離職した際、特定受給資格者と認定してもらうのに大いに役立つでしょう。

2-6. 特定理由離職者とは

特定理由離職者には2つの分類があります。一つは、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより、離職した方(いわゆる雇い止め)。ただし、これは離職者が更新を希望したにもかかわらず、会社との間で更新についての合意が成立しなかった場合に限ります。

もう一つは、以下のような、正当な理由のある自己都合により離職した方のことです。

①体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力、聴力、触覚等の減退等により離職した者
②妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
③父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
④配偶者や扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
⑤結婚に伴う住所の変更、保育所の利用等の理由により、通勤不可能又は困難となったことで離職した者
⑥希望退職者の募集に応じて離職した者

3. 失業保険(基本手当)の金額とはどれくらいなのか

今度は、実際にどれくらいのお金がもらえるかについて説明していきます。

3-1. 基本手当日額とは

基本手当日額とは、雇用保険で受給できる1日当たりの金額を指します。
この「基本手当日額」は原則として、離職した日の直前の6か月に、毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除く)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」という。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となっており、賃金の低い人ほど高い率となっています。

ただし、基本手当日額は年齢区分ごとに上限額と下限額が定められており、次の表のようになっています。

※ 毎年8月1日に、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減によりこの額は変更されます。下記に記載の金額は2018年8月1日から適用の額です。

30歳未満上限 6750円  下限 1984円
30歳以上45歳未満上限 7495円  下限 1984円
45歳以上60歳未満上限 8250円  下限 1984円
60歳以上65歳未満上限 7083円  下限 1984円

3-2. 退職前の残業との関係性

この、基本手当日額の計算には、先ほど記述した賞与のように計算に含まれないものと、含まれるものがあります。この、含まれるものの中に、通勤手当や残業代があります。つまり、離職の日直前の6か月間の残業代が多いほど、基本手当日額がたくさんもらえるということです。

また、先述しましたように、離職前に残業時間が一定時間以上に及ぶと特定受給資格者(会社都合退職)とみなされ、一般離職者(自己都合退職)よりも手厚い給付を受けることができます。だから、離職する前に残業の記録をとっておくことは大事なことなのです。損をしないためにも、先ほども紹介しましたザンレコはもちろん、タイムカードや労働時間が記載された業務日報、残業中に送った業務に関するメール等の送信履歴など、残業の証拠として有効な記録は、日ごろからきちんととっておきましょう。

4. まとめ

・失業保険(基本手当)を受給できる時期やもらえる期間は、受給者の分類によって異なる。
・残業時間が長いと特定受給資格者(会社都合退職)扱いになり、待期期間7日間の後から失業保険(失業手当)が受給できる。
・失業保険(基本手当)の金額は残業代等も含めた賃金の50~80%(60歳~64歳については45~80%)で、賃金の低い人ほど高い率になる。

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