2018/05/31

残業代請求における「お金が貰えるまでの流れ」と「使える証拠」(弁護士監修)

執筆者 編集部
残業代関連

近頃、サービス残業という言葉をテレビや新聞で目にする機会が増えたのではないでしょうか。そして、それによって悩まされている方も多いのではないでしょうか。残業代請求は、弁護士に依頼すれば簡単に行うことが出来ます。この記事では、これから残業代請求をしたいと悩んでいる方や、残業代請求について知りたいと感じている方に向けて、弁護士に依頼した場合の一般的な残業代請求の流れや、あるとよい資料、使える証拠や残業代請求ができる期限について説明をしていきます。

1. 残業代請求の一般的な流れ

まず、残業代請求における基本的な流れについて説明します。大きく分けて、流れは①示談交渉、②労働審判、③訴訟(いわゆる裁判)の順に3つあります。①から③について、それぞれ簡単に下記で説明します。

①示談交渉

示談交渉とは、会社との交渉です。示談交渉では、納得できる金額の残業代を払ってもらえるように、弁護士が会社と交渉します。

このとき、残業代の計算や、会社との交渉等は弁護士が行うため、あなたがやることは、弁護士からの事実確認の質問に答えたり、会社との合意金額について弁護士と相談する程度です。かかる時間は2~3か月程度のことが多いでしょう。

また、弁護士に依頼すると、残業代請求の勝率は非常に高いため、多くの場合、この示談交渉で残業代を払ってもらえます。

この場合、通常は、互いに残業代を請求したことを他人に話さないという契約(守秘義務契約)を会社と結びます。そのため、あなたが残業代請求したことが周りに知られる可能性は低いといえます。

②労働審判

示談交渉で会社と合意できない場合には、裁判所で労働審判を行います。労働審判は、話合いと訴訟(いわゆる裁判)の中間のような非公開の手続で、調停(お互いの合意)や裁判所からの審判によって残業代を払ってもらいます。かかる時間は、通常は2か月半程度、長い場合で4か月程度です。

労働審判になった場合、こちらの勝率も高く、8割程度は労働審判における調停や裁判所の審判に基づき、残業代を払ってもらえます。

また、労働審判で解決した場合も示談交渉の場合と同様に、守秘義務契約を結ぶのが一般的であるため、周りに残業代請求をしたことが知られる可能性は低いといえます。

③訴訟

訴訟とは、いわゆる裁判のことです。労働審判の結果について労働者か、会社のどちらかが同意しない場合等には、裁判所で訴訟を行います。かかる時間は半年~1年程度となる可能性もあります。

このとき、残業代に加えて、最大で残業代と同額の付加金を貰えることがあります。判決が出た場合には、会社はその判決を必ず守る義務があります。

また、訴訟で解決した場合、ニュースで取り上げられたりすることを心配する方もいらっしゃいますが、会社が超有名企業でなければ、ニュースになる可能性は低いでしょう。

※会社もしくは労働者が上訴した場合は、高等裁判所での訴訟に移行します。

ここまで、3つの流れについて説明しましたが、残業代請求は示談が成立すれば1~2か月程度、それで解決しなくても労働審判によってほとんどの場合は3か月程度で解決します

つまり、残業代請求はそれほどの手間もかからないし、訴訟になるケースもほとんど無いと言えます。また、弁護士に依頼した場合、仮に労働審判や訴訟まで持ち込んだときも必要書類の作成などは弁護士がしてくれるため、あなたの負担はほとんどありません。

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2. 残業代請求に有益な資料

次に、残業代請求を弁護士に依頼をする際、あるいは法律相談に行く際に、あれば有益な資料が主に4つあります。依頼や法律相談をするにあたって、資料がそろっている必要はありませんが、以下で紹介する資料は、あると有益でしょう。

①就業規則、賃金規程など、始業・終業時刻等や給与の金額がわかる資料

②給与明細など、支給された給与の金額・内訳がわかる資料

③雇用契約書(ある場合)

そして最後の④は、最も重要な労働時間の証拠となる資料です。証拠となる資料の例を以下で紹介したいと思います。

④労働時間の記録

  • タイムカードのコピーや労働時間管理ソフトのデータ
  • パソコンの起動・終了時間の記録
  • 労働時間が記載されている業務日報、オフィスの入退館記録
  • 残業時間中会社のアドレスから送信した業務に関するメール
    残業時間中携帯電話からの発信記録又は業務に関するメール
  • (ドライバーの方の場合の)タコグラフ
  • ザンレコの記録(「ザンレコ」の記録だけでも証拠になりますが他の資料もあれば証拠価値を高めることができます。)

※必要な資料は具体的事情によっても変わるので、法律相談の際などに弁護士に確認してください。

※④記載の「ザンレコ」とは、弁護士が開発した示談交渉・裁判の証拠として使える無料のアプリのことです。このアプリは自動で残業時間の証拠を確保し、未払い残業代を取得する手助けをしてくれるというものです。詳しくはこちら

また、会社によっては、仕事をしていたという証拠がないと反論してくる場合があります。この場合、会社はあなたが「働いていなかった」という証拠を提示しなければいけないのですが、念のため、残業中に仕事をしていたということを証明できるものも証拠としてあればいいでしょう。そのような証拠としては、例えば下記のようなものがあります。

  • 上司からの残業を指示する書類やメール
  • 残業時間中の業務内容が記載されている業務日報
  • 残業時間中に送信した業務に関するメール

(編集部注:今すぐ残業時間の証拠を確保したい方は無料アプリ「ザンレコ」をダウンロード!)

3. 残業代請求の時効

3つ目の項目では、残業代請求ができる期間には期限があるということについて伝えたいと思います。残業代の請求は、過去2年分まですることができます。これはつまり、2年を過ぎてしまうと、基本的には時効によって残業代は消滅していってしまうということです。しかし、この「時効」を止める方法が実は2つあります。その方法とは以下の2つです。

※この場合の消滅とは、全額が一度に消滅することを指すのではなく、毎月、その月の2年前の月の残業代が消えてしまう等、段階的に消滅していくことを指しています。

①内容証明等を送って残業代請求 ⇒ 時効が6か月間停止

時効が間近になった際に、内容証明(内容証明郵便)等を送って残業代を請求(民法上の「催告」)すると6か月間は時効が成立しなくなります。しかし、この6か月間の時効停止は暫定的なものなので、この猶予の6か月の間に②の労働審判等を行わなければ、時効は止まりません。

そのため、この6か月の間に示談が成立する見込みがない場合、②の労働審判等の準備をする必要があります。

②労働審判や訴訟 ⇒ 時効停止

労働審判の申立てや民事訴訟の提起(民法147条の「請求」)により、時効は停止(時効中断)します。

なお、労働審判や訴訟以外にも、会社(使用者)側が残業代債権の存在を認めた場合(民法147条の「承認」)にも、時効は停止します。

また、現行の労働基準法においては、労働者が未払い残業代を会社に請求できるのは過去2年分までとされていますが、この規定の見直しに向けた議論が、現在厚生労働省の有識者検討会で本格化しています。この改正案は、残業代請求ができる期限を2年から5年に延長するというものです。これは、今後どうなっていくのか注目していくべきでしょう。

(編集部注:消滅時効を迎える前に自分も残業代を請求したい!と思ったら、残業代・解雇弁護士サーチでお近くの弁護士に相談してみよう!)

4. あとがき

ここまで、1~3の項目についてそれぞれ説明してきましたが、少しでもお役に立つことはできたでしょうか? これまでに記述しましたように、残業代請求は、弁護士に依頼すれば比較的スムーズに進むものです。また、残業代請求には期限がありますので、お悩みの方は、ぜひお早めに弁護士に相談しましょう。

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