2021/01/06
【弁護士監修】みなし残業の超過分は請求できる?請求の方法も解説!
執筆者 編集部みなし残業制で給与を受け取っている方も多いことと思います。みなし残業とは、一定時間分の残業代が固定給に含まれているものです。
ところで、このみなし残業で規定の残業時間を超過した場合には、超過分の残業代を請求できるのでしょうか?請求法もあわせて見ていきましょう。
【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)
監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか
【目次】
1. みなし残業とは?
みなし残業とは、一定時間の残業代が固定給に含まれているものです。たとえば「20時間分の残業代」が基本給に上乗せして支払われます。この場合、実際の残業時間が20時間に満たなくても、20時間分の残業代が固定で支払われることになります。
労働者にとってのみなし残業のメリットは、仕事を早く終え、実際の残業時間をみなし残業時間より少なくできれば、働いていない分の残業代も受け取れることだといえます。仕事を早く終えるモチベーションが高まるでしょう。
また、企業側にとっても、残業代の面倒な計算をしなくてよくなることがみなし残業のメリットです。
2. みなし残業の超過分は残業代を請求できる!
みなし残業制では前述の通り、実際の残業時間がみなし残業時間より少なくても、残業代は固定で支払われます。
それでは、実際の残業時間がみなし残業時間を超過した場合(たとえばみなし残業時間が20時間で実際の残業時間が30時間になった場合)はどうなるのでしょうか?
「実際の残業時間が少ない場合と同じように、残業代は固定額になる?」
と思ってしまう方もいることでしょう。
しかし、それは違います。実際の残業時間がみなし残業時間を超過した場合には、超過した時間分、上の例なら10時間分の残業代は別途支払われなければなりません。
もし残業時間がみなし残業時間を超えているのに、その分の残業代が支払われていない場合には、未払いの残業代を会社に請求することができます。
3. みなし残業超過分の請求方法
みなし残業時間を超過した分の残業代を会社に請求するための方法は以下の通りです。
3-1. 証拠を集める
まず必要なのは、残業代を計算するための証拠を集めることです。証拠には、残業時間を示すものと実際に受け取っている賃金の額を示すものの2種類あります。
残業時間の証拠としては、タイムカードや出勤簿のコピーが入手できれば、それが最も強力です。それ以外でも、業務メールの送受信記録や交通ICカードの通過履歴なども証拠として認められることがあります。
また、実際に受け取っている賃金の額を示すための証拠として、就業規則や給与明細などがあります。
3-2. 超過分の残業代を計算する
証拠が手に入ったら、未払いの残業代を計算します。
残業代の計算は、
残業時間 ×1時間あたりの賃金 × 割増率
で行います。
「残業時間」は、この場合はみなし残業時間を超過した分のみとなります。実際の残業時間からみなし残業時間を差し引くことで求められます。
「1時間あたりの賃金」は、月給制の場合なら、基本給を「月平均所定労働時間数」で割って求めます。
月平均所定労働時間数は、
{365日(うるう年なら366日)- 1年間の休日数}× 1日の所定労働時間 ÷ 12
で計算します。
「割増率」は下の表の通りとなります。
残業の種類 | 割増率 |
時間外労働(法外残業)(1日8時間・週40時間を超えた分) | 1.25 |
残業が週60時間を超えた場合(※) | 1.5 |
深夜労働(午後10時~午前5時までの労働) | 1.25 |
休日労働(法定休日労働) | 1.35 |
時間外労働(法外残業)(1日8時間・週40時間を超えた分)+深夜労働 | 1.5 |
時間外労働(週60時間超)+深夜労働 | 1.75 |
休日労働(法定休日労働)+深夜労働 | 1.6 |
※中小企業の場合は、週60時間を超える残業の割増率が50%になるのは2023年4月以降です。
たとえば、
・超過分の残業時間 …10時間
・1時間あたりの賃金 …1,500円
の場合には、1日8時間・週40時間を超えた分の残業代は、
10時間 × 1,500円 × 1.25
で計算され、「18,750円」ということになります。
3-3. 会社と交渉する
超過分の残業代を計算したら、未払い残業代の支払いを会社と交渉します。通常の会社であれば、請求された残業代はすぐに支払いをするはずです。
しかし、ブラック企業の場合は残業代をなかなか支払わないこともあります。
残業代の支払いがすぐにされない場合には、
・内容証明を会社に送る
・労働審判を申し立てる
・訴訟を提起する
などの対処法があります。
ただし、これらを自分一人で行うことは、一般の方には難しいかもしれません。また、残業代の計算も「難しい」と思う方もいることでしょう。
したがって、未払いの残業代を会社に請求する際には、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士は、証拠集めのアドバイスや残業代の計算をしてくれます。また、弁護士の名前を出すだけで会社が大きく態度を変え、残業代の支払いにすんなりと応じるようになることも多くあります。
4. 違法なみなし残業に注意!
みなし残業は、ブラック企業が残業代を抑えるために使われることが多くあります。
以下のようなみなし残業は違法ですので注意しましょう。
・基本給とみなし残業代が区別されていない(「基本給30万円・一部みなし残業代20時間分を含む」など)
・就業規則などに明示されていない
・超過分の残業代を支払わない
5. まとめ
残業代を抑制するためにブラック企業が導入するケースも多いみなし残業。しかし、法定労働時間を超えて働いた場合には、残業代を受け取ることは労働者にとって当然の権利です。弁護士とも相談しながら、未払いの残業代を取り戻していきましょう。
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