2020/08/17

【弁護士監修】残業代を申請する際に知っておくべきこととは?却下されたら?

執筆者 編集部
残業代関連

「残業代をきちんともらっていないので申請したい」と思ってはいませんか?
残業をした従業員に残業代を払うのは、法律で定められた会社の義務です。残業をしたら残業代をしっかりと申請し、支払いを会社に求めましょう。
この記事では、残業代を申請できるケースと申請方法、および申請を却下された、あるいは忘れたらどうしたら良いかを詳しく解説していきます。

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

1. 残業代を申請できるケースとは?

残業代については「労働基準法」で定められています。労働基準法によれば以下のような場合には残業代が支払われなくてはなりません。
・決められた就業時間を超えて働いた
・1日に8時間を超えて働いた
・1週間で40時間を超えて働いた
また、以下のような場合にも通常の賃金に加えて「割増賃金」が支払われなければなりません。
・午後10時~午前5時までのあいだに働いた(深夜労働)
・休日に働いた(休日労働)
※「休日」は、週休2日の場合なら、そのうちどちらか一日の「法定休日」に働いた場合に休日労働が認められます。
以上のケースにおいて残業代や割増賃金が支払われていなければ、それらは法律に違反した「未払い」の状態であることにあります。未払いの残業代や割増賃金は会社にしっかり申請し、支払いを求めましょう。

2. 残業代の申請方法

残業代や割増賃金の申請方法を見てみましょう。

2-1. 残業代が未払いになっている証拠を集める

最初にしなければならないのは、残業代が未払いになっている証拠を集めることです。
残業代が未払いになっている証拠として、まず実際にどれくらい残業していたかを示す書類が必要です。それらの書類のうち代表的なものは、「タイムカード」です。そのほかに「出退勤時間が記録された日報」「業務用メールの送受信記録」なども証拠として認められます。

2-2. 残業代についての会社の規定を集める

次に必要なのは、残業代についての会社の規定を集めることです。「就業規則」や「雇用契約書」などがこの証拠にあたります。

2-3. 残業代が未払いになっていることの証拠を集める

残業代を請求するには、残業代が未払いになっていることの証拠も必要です。「給与明細」がその証拠となります。

2-4. 未払いの残業代を計算する

以上の証拠を集めた上で、未払いの残業代がいくらになるかを計算します。残業代は、
 1時間あたりの賃金 × 残業時間 × 割増率
で計算できます。1時間あたりの賃金は、月給の場合なら、
 基本給 ÷ 月平均所定労働時間
で求めることができます。「月平均所定労働時間」は「1年間の所定労働時間」をまず求め、それを「12」で割ります。
「1年間の所定労働時間」は、下の計算式で求めることができます。
 〔365日(うるう年なら366日)― 1年間の休日数〕× 一日の所定労働時間
残業や深夜労働、休日労働の「割増率」は、下の表の通りとなります。

労働の種類割増率
残業(一日8時間、週40時間超)×1.25
残業(残業が1ヵ月で60時間超)×1.5
深夜労働(午後10時~午前5時)×1.25
休日労働(法定休日に働いた)×1.35
残業+深夜労働×1.5
残業+休日労働×1.6

2-5. 残業代を会社に申請する

以上の手続きを踏んだ上で、残業代を会社に申請しましょう。通常の会社なら、残業代の支払いは法的に定められた会社の義務となりますので、すんなりと支払ってくれるはずです。

3. 残業代の申請が却下されたらどうすれば?

もし上記の手続きを踏んで残業代を申請しても、申請が却下された場合は、さらに以下のような方法をとることができます。

1. 内容証明郵便を会社に送る
内容証明郵便とは、郵便の内容と送付日を郵便局が記録し、証明してくれるものです。残業代の申請を内容証明郵便で送ることにより「残業代の申請を会社に行ったこと」の法的な証拠となります。また、未払残業代の時効の完成を猶予させる効果もあります。

2. 労働審判を申し立てる
内容証明郵便を送っても会社が残業代を支払わなければ、次に「労働審判」を申し立てることができます。労働審判とは、裁判官と審判員の同席のもとで会社と話し合いをすることです。従業員が単独で交渉するより、残業代の支払いに会社が応じる可能性が高くなります。

3. 訴訟
労働審判の調停に会社が従わない場合には、審判は訴訟に移行します。訴訟では、裁判所が会社に対して残業代の支払いを命じることができます。

ただし、従業員が正当な残業代を申請しても、それを却下して支払おうとしない企業は「ブラック企業」だといえます。ブラック企業と戦う際には、会社から不条理な圧力をかけられるなどして、従業員一人だけでは厳しくなることもあります。弁護士に相談し、力を貸してもらうのがよいでしょう。

4. 残業代の申請を忘れた場合は?

残業代の申請を忘れた場合は、思い出した時点で申請しましょう。残業代申請の時効は「2年間」(2020年3月31日までに発生した残業代について。2020年4月1日以降に発生した残業代は3年間)です。
「残業代の申請を忘れて会社を辞めてしまった」などのケースもあることでしょう。しかし、残業代は会社を辞めたあとでも問題なく申請できます。

5. まとめ

残業をさせたら残業代を支払うのは法律で定められた会社の義務です。残業代はしっかりと申請し、支払いを求めましょう。
しかし、前述の通りブラック企業は、残業代をすんなりと支払おうとしないケースも多くあります。その場合には、労働問題についての知識と経験を豊富に持つ弁護士に相談してみるのがよいでしょう。

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