2020/08/12

【弁護士監修】残業代の割増賃金とは?割増が発生するケースを詳しく解説

執筆者 編集部
残業代関連

「残業代には割増賃金がつく?」「割増はいくらになる?」と思っている人も多いでしょう。残業代や休日・深夜での労働には割増賃金がつきます。残業、休日労働、あるいは深夜での労働をさせて割増賃金を支払わないのは違法です。この記事では、残業代と休日・深夜の割増賃金がどのようなケースで発生するかを詳しく解説していきます。

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

1. 法定外の残業代には割増賃金が発生する

法定外の残業代には割増賃金が発生します。
ここで「法」とは労働基準法のことです。
労働基準法においては、
・1日に8時間まで
・1週間に40時間まで
を「法定労働時間」としています。
この法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には割増賃金を支払わなければならないと労働基準法は定めています。
残業代のほかに割増賃金が発生するのは「休日労働」と「深夜業」です。
労働基準法において休日は「1週間に1日または4週を通じて4日」与えられなければならないとされており、これを「法定休日」と呼びます。
法定休日に労働した場合には割増賃金が発生します。
また、労働基準法は「午後10時~午前5時」までのあいだの労働を「深夜業」としています。
深夜業を行った場合にも、割増賃金が必要です。

2. 残業や休日・深夜業の割増賃金

残業や休日・深夜業の割増賃金は下の表のとおりです。

労働時間割増率
法内労働1日8時間、週40時間まで1.0倍
法定外残業1日8時間、週40時間以上1.25倍
月に60時間以上の残業1.5倍
休日労働週に1日または4週に4日1.35倍
深夜業午後10時~午前5時1.25倍

ただし、上の表中「月に60時間以上の残業」については、中小企業は2023年4月まで免除され、割増率は「1.25倍」のままとなります。
残業や休日労働・深夜業についての賃金の割増は労働基準法により定められているものです。
残業や休日労働・深夜業をさせたにもかかわらず割増賃金を支払わないのは違法です。

3. 法定外残業と法内残業のちがい

ここで、法定外残業と法内残業のちがいを見てみましょう。
同じ残業であっても割増賃金がつく場合とつかない場合とがあるからです。

3-1. 法内労働時間で残業をした場合には割増賃金はつかない

労働基準法において残業代に割増賃金が必要とされているのは「1日8時間、1週40時間」以上労働した場合についてです。
したがって、この時間より短い労働時間で残業があった場合には割増賃金はつきません。
たとえば、午前9時から午後5時までの勤務時間で昼休みが1時間あるとき、午後7時まで残業した場合について考えてみましょう。
このケースでは、1日の所定労働時間は「7時間」であることになります。
したがって、午後5時~6時までの1時間の残業は、法定労働時間である8時間の範囲内で行われた「法内残業」となります。
そのために、たとえ残業であっても割増賃金はつきません。
それに対して、午後6時~7時までの1時間の残業は、法定労働時間8時間を超える「法定外残業」となります。
そのために、割増賃金がつくことになります。

3-2. 休日労働にも「法定休日」と「法定外休日」とがある

休日労働にも、残業と同様に「法定休日」と「法定外休日」とがあります。
労働基準法では休日は「1週に1日または4週を通じて4日」与えなければならないとされています。
しかし、会社によっては完全週休2日制のケースもあるでしょう。
完全週休2日制の会社では、労働基準法で定められた「法定休日」のほかに、会社で独自に定めた「法定外休日」が1日あることになります。
法定休日に労働をした場合には、前述のとおり休日労働の割増賃金として「1.35倍」が付加されます。
それに対して、会社が独自に定めた法定外休日に労働をした際には、法律上は休日労働の割増賃金をつける必要はありません。
ただし、法定外休日の労働が法定内労働の40時間を超えている場合には、法定外残業の割増賃金「1.25倍」のみがつけられます。
また、会社によっては法定外休日の労働に対しても割増賃金をつけるケースもあります。
会社独自の規定がどのようになっているかは就業規則などを確認しましょう。

4. 割増賃金は重複して発生する

残業代や休日労働・深夜業の割増賃金は重複して発生します。

4-1. 残業+深夜業の場合

残業をしていたら、午後10時~午前5時の「深夜業」の時間帯になってしまった、ということもあるでしょう。
その場合には、午前10時以降の深夜業の時間帯については、深夜業の割増賃金が加算されます。
残業代の割増賃金は「1.25倍」ですので、ここに深夜業の割増賃金「1.25倍」が加算され、深夜に残業した場合の割増賃金の合計は「1.5倍」となります。

4-2. 休日労働+深夜業の場合

休日労働が深夜に及んでしまった場合にも、やはり休日労働と深夜業との割増賃金が加算されます。
休日労働の割増賃金は「1.35倍」、深夜業の割増賃金は「1.25倍」ですので、休日労働を深夜まで行った場合の割増賃金は、両者を加算した「1.6倍」となります。

4-3. ただし休日の残業はない

ただし、休日労働で8時間以上の労働を行った場合でも、残業の割増賃金は発生しません。
なぜならば、休日にはそもそも法定労働時間が定められていないからです。
前述したとおり休日に行った労働が週の法定労働時間「40時間」を超えた場合は、その分についてのみ残業代の割増賃金が発生します。

5. まとめ

残業と休日・深夜の労働には労働基準法で定められた割増賃金がつきます。残業や休日・深夜の労働をしていながら割増賃金がつけられないのは違法です。もし自分の給与に割増賃金がつけられていない場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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