2020/06/22

【弁護士監修】深夜手当の計算はアプリが便利。計算方法と未払いの給料を請求する際のポイントも解説

執筆者 編集部
残業代関連

「未払いの深夜手当があるかどうかわからない」、「残業代請求をしたいけど深夜手当の計算方法が複雑でやる気が出ない」という方もいるのではないでしょうか。

まずは、残業代の計算方法を正しく理解することが大切です。特に深夜手当については割増率が二重にかかる場合があるため、計算方法は少々複雑といえるでしょう。また、残業代請求をする場合には証拠が必要なので、残業に関わるさまざまな項目を記録しておかなければなりません。

この記事では、深夜手当の計算方法について解説するとともに、残業代を効率的に計算する手法や残業代請求をする際のポイントなどをご紹介します。

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

 

1. 正社員も契約社員も深夜手当の計算方法を知ろう


深夜手当とは、原則として午後10時から午前5時の間に労働した場合に、通常の労働時間の賃金の25%以上を割り増して支払われる割増賃金のことを指します。ただし、厚生労働大臣が認める地域または期間については午後11時から午前6時となるケースもあるので覚えておきましょう。

深夜手当は一般の正社員だけでなく管理職の社員にも請求権があります。また派遣社員やアルバイトでも上記の時間に労働した場合には、深夜手当を請求する権利があります。「派遣社員だから」、「アルバイトだから」と諦めず、深夜手当についてしっかり理解しましょう。

2. 深夜手当を計算してみよう

ここでは、深夜手当の計算に必要な項目とその計算式について解説します。まずは所定内賃金(基本給)、所定労働時間から1時間当たりの基礎賃金を計算しましょう。そこから 実労働時間と割増賃金率を合わせて深夜手当の金額を算定します。

以下の計算式に自分のケースを当てはめて計算してみましょう。計算結果を給与明細と照らし合わせれば、支払われるべき深夜手当が支払われているかどうかを確認できます。

2-1. 所定賃金(基本給)のチェック

深夜手当の金額は所定賃金(基本給)を基礎として計算します。まずは、自分の所定賃金(基本給)がいくらなのかを確認する必要があります。

所定賃金(基本給)は、毎月支給される給与明細を見れば確認できます。昇給などで変動している場合もあるので注意が必要です。毎月の給与明細をすべて確認するほうが正確な金額がわかりますが、各年につき1か月分をピックアップしておおよその金額を確認する程度でも十分でしょう。

また、使用者との間で雇用契約や労働契約を締結している場合は、契約書の条項から所定賃金(基本給)を確認できます。

2-2. 所定労働時間のチェック

次に所定労働時間を確認しましょう。所定労働時間とは、始業時間から就業時間までの労働時間から休憩時間を除いた時間を指します。所定労働時間の計算方法は、月給制か日給制かによって異なります。

月給制の場合は、1か月間の所定労働時間を計算します。1日の所定労働時間は就業規則や雇用契約書で定められていますが、1か月の所定労働時間については、月によって日数や休日数が異なるため、1年間の平均を算出しましょう。月給制の場合の1か月の所定労働時間を求める計算式は以下です。

1か月の所定労働時間=(365日-1年間の休日の合計日数)×1日の所定労働時間÷12か月

一方、日給制の場合は、1日の所定労働時間を計算します。所定労働時間数が日によって異なるケースもあるでしょう。その場合は1週間の平均を算出します。日給制の場合の1日の所定労働時間を求める計算式は以下です。

1日の所定労働時間=1週間の所定労働時間の合計÷1週間の労働日数

2-3. 1時間当たりの基礎賃金を算出

そして、1時間当たりの基礎賃金を算出します。基礎賃金も月給制・日給制で計算方法が異なるので注意しましょう。

月給制の場合、1時間当たりの基礎賃金の計算式は以下です。

1時間当たりの基礎賃金=1か月当たりの基礎賃金÷1か月の所定労働時間

1か月当たりの基礎賃金には各種手当を含みます(残業代・深夜手当は除く)。ただし、労働と直接的な関係が薄い以下の手当は除外されるので注意しましょう。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

一方、日給制の場合、日給を1日当たりの所定労働時間で割ります。したがって、1時間当たりの基礎賃金の計算式は以下です。

1時間当たりの基礎賃金=1日当たりの基礎賃金÷1日の所定労働時間

2-4. 実労働時間をチェック

次に、深夜残業の実労働時間を確認しましょう。深夜手当は実際に労働をした時間、つまり拘束時間から休憩時間を除いた労働時間に対してのみ支払われます。

タイムカードや業務日誌、勤怠を記録している資料・データや、デスクワークであればパソコンのログインデータなどから、各日における実労働時間を確認し、それらの合計値を求めることが必要です。

2-5. 割増賃金の計算式

では、以上の項目で確認した数値を用いて割増賃金の金額を計算しましょう。割増賃金率は時間外、休日、深夜の3種類があり、深夜手当の場合は25%以上と定められています。計算式は以下です。

深夜手当の割増賃金=1時間当たりの基礎賃金×深夜残業の実労働時間×25%

具体的な例を用いて計算してみましょう。月給制で1か月の平均所定労働時間は160時間、 1か月当たりの基礎賃金は32万円だとします。深夜残業を行ったのは3日間で、実労働時間はそれぞれ2時間、3時間、2時間の合計7時間です。この場合、深夜手当の割増賃金は以下のように求めます。

1時間当たりの基礎賃金=32万円÷160時間=2000円

深夜手当の割増賃金=2000円×7時間×25%=3500円

3. 深夜手当の計算を行う際はエクセルで管理

深夜手当の計算には、Excelを使用して各日の深夜残業時間を管理するのが便利でしょう。Excelでは日々の出勤時刻、退勤時刻、休憩時間などを表形式で見やすくまとめることができます。また関数を使用すれば、これらの時刻・時間を入力するだけで給料や各手当の金額を自動計算してくれるので手間が省けます 。

下記のウェブサイトなどを参考にして、勤怠管理用のExcelファイルを作成してみましょう。

参考:『Excel:○時以降は時給割増の計算方法』

4. わずらわしさ0で深夜手当を計算する方法


深夜手当を計算するためには、日々の実労働時間をきちんと管理しなければなりません。 計算に必要な数値や項目も多く、作業が煩雑な側面は否定できないでしょう。

最近では、残業代の計算に利用できるスマホアプリやPCソフトがあります。便利で時間の短縮になるほか、残業代請求の証拠集めに役立つものもあります。ここではその一部をご紹介します。

4-1. 残業証拠収集アプリ

スマホアプリには残業代の計算が手軽にできるものがあります。中でも弁護士が開発した残業証拠収集アプリ『ザンレコ』はおすすめでしょう。

スマートフォンにインストールするだけで、GPS機能により勤務先・得意先などでの 滞在時間を自動的に計測・記録します。あらゆる勤務形態に対応し、ユーザーの労働時間から残業代まで自動で推計してくれるので、わずらわしい計算や確認をする必要がありません。

さらに、アプリ内ページから勤務先や住まいの近くの弁護士を検索する機能もあり 、残業代請求の相談・依頼がすぐにできるのもメリットのひとつです。

『ザンレコ』は残業代の把握に特化した多機能アプリで、弁護士監修のもと、残業代請求に必要な項目を網羅しています。残業代請求をする際の客観的証拠として利用できるので、残業の多い方などはインストールしておくとよいでしょう。

参考:『ザンレコ』

4-2. 給与計算ソフト

また、給与計算ソフトを利用することで残業代の計算を効率化できるでしょう。給与計算ソフトには、勤務時間などを入力するだけで自動的に支払われるべき給与の総額や各種割増賃金の内訳を計算・表示する機能が備わっています。所得税や保険などの制度の改正などにも対応しているので安心です。

ソフトを購入しなくても無料で利用できるクラウド給与計算ソフトなどもあります。 残業代の計算をらくにしたいという方は、給与計算ソフトを利用するのも有効な方法でしょう。

4-3. 動画サイト

給与計算は一見すると単純な作業ですが、理解を間違えると正しい金額を算出できないので正確に把握する必要があります。最近ではYouTubeに深夜手当の計算方法についての動画がアップされています。

動画はビジュアルに訴える形でわかりやすいため、短時間で要点を押さえて理解できます。できるだけ、弁護士が監修したサイトなど、信頼性の高いものをチェックするようにしましょう。

5. 深夜手当を請求する際に知っておきたい法律


深夜手当の計算方法は労働基準法を根拠としています。深夜手当やそのほかの残業代に関する問題への理解をより深めるためには、根拠となる法律上の規定について知っておくほうがよいでしょう。

ここでは、深夜手当の計算に関係する労働基準法(および施行規則)の条文について、いくつかご紹介します。

5-1. 労働基準法 第37条第4項

労働基準法第37条は、時間外・休日・深夜の残業の割増賃金にかかわる条項です。同条4項では、使用者が労働者に午後10時から午前5時(厚生労働大臣が認める地域または期間については午後11時から午前6時)までの間、または休日に労働させた場合は、通常の労働時間の賃金に25%以上をかけた金額の割増賃金を支払わなければならない旨が規定されています。

同条第5項では、割増賃金を算出する基礎賃金には、家族手当、通勤手当、そのほかの厚生労働省令で定める賃金は含まれないことを規定しています。上述でも説明しましたが、基礎賃金に含まれる手当と含まれない手当があるのでしっかり把握しましょう。

5-2. 労働基準法 施行規則 第20条 第1項

労働基準法施行規則第20条は深夜残業の割増賃金にかかわる条項です。同条第1項では、時間外労働であり、かつ午後10時から午前5時(厚生労働大臣が認める地域または期間については午後11時から午前6時)までの間の労働時間については、通常の労働時間の賃金に50%以上をかけた金額の割増賃金を支払わなければならない旨が規定されています。

時間外労働の割増賃金率が25%以上、深夜残業の割増賃金率が同じく25%以上とされているので、両方に該当する場合には合計50%以上が労働時間外の深夜残業の割増率となります。

なお、労働時間外の深夜残業以外にも、1か月につき60時間を超える時間外労働を行った 場合には、60時間を超える部分について75%以上の割増賃金を支払わなければならないと規定しています(中小企業の場合は2023年4月1日から適用)。

5-3. 労働基準法 施行規則 第20条 第2項

労働基準法施行規則第20条第2項では、法定休日における深夜残業について、通常の労働時間の賃金に60%以上をかけた金額の割増賃金を支払わなければならない旨が規定されています。

法定休日出勤の割増賃金率が35%以上、深夜残業の割増賃金率が25%以上とされているので 、両方に該当する場合には合計60%以上が法定休日に出勤した場合の割増率となります。

なお、「法定休日」とは土日祝すべてが該当するわけではありません。労働基準法では最低週1日(または4週間に4日)を法定休日とし、この日に出勤した場合が割増賃金の対象となります。

6. 深夜手当の未払いが一部でもあれば請求をしよう

深夜手当の金額を計算して給与明細と照らし合わせた結果、残業の未払い分があることが判明した場合、勤め先に対する請求の準備を始めましょう。

深夜手当に係る請求権は2年間が経過すると時効が発生します。時効期間が過ぎ、勤め先が時効を援用した場合、深夜手当の支払いを請求することはできなくなってしまうので、早めに行動しましょう。

また、労働基準法改正により、2020年4月1日以降に発生した残業代の請求権の時効期間は3年間となります。残業代請求権の時効期間が延長するとはいえ、深夜手当を含むそのほかの残業代の請求には莫大な時間と労力を費やすでしょう。スムーズに進めるためにも弁護士に相談するのがおすすめです。

7. まとめ


深夜手当の計算方法は複雑で、また自分で勤怠を管理しなければならないため、未払いがあるかどうか確認する作業は煩雑といえるでしょう。

未払いの深夜手当やそのほかの残業代があることが判明した場合は、残業代請求の時効が発生する前に請求しなければなりません。残業代請求の手続きや証拠集め、勤め先との話し合い、訴訟など、個人で行うには負担が大きい部分もあるため、ノウハウに精通している弁護士へ依頼するほうがよいでしょう。

ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功/不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るか分からない中で、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。

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