2020/06/22

【弁護士監修】残業50時間は過労死への序章?残業問題を解決するための方法

執筆者 編集部
残業代関連

この記事を読んでいる方の中には、「50時間程度の残業ならよくある……」という方もいるかもしれません。しかし「50時間の残業」は多い残業時間であることを知らない方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、50時間残業にひそむ健康面のリスクや、違法性などについて詳しく解説します。状況改善のための対策や、未払い残業代の請求方法なども学べる内容を確認しましょう。

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

 

1. 50時間以上の残業は平均的な残業時間の倍近い!


「50時間の残業が日常的になっている」という方もいるでしょう。しかし50時間という残業時間は、普通よりも多いといえます。

2020年1月に発表されたデータによると、日本の平均残業時間は「25時間」程度です。(働きがい研究所 日本の残業時間 定点観測)つまり50時間の残業をしている場合、平均の2倍ほどの残業をしていることになります。業務量が多く残業をしなければならないときもあるかもしれませんが、長時間残業をしているという認識はしておきましょう。

2. 残業50時間が常態化すると体調不良のリスクも

残業時間が長いと、健康面に問題が生じるリスクも高まるため注意が必要です。長時間にわたる過重労働は疲労を蓄積させる要因になると考えられており、脳疾患や心臓疾患との関連性が強いという医学的見地も得られています。

こうした疾患や、心理的負荷による精神障害が原因で死にいたるケースもあり(いわゆる「過労死」)、過労は軽視できないものです。長時間残業が常態化している場合は、対策を考えたほうがよいといえます。

3. 健康だけじゃない!50時間以上の残業により起きる問題


50時間以上の長時間残業には、健康リスク以外にもさまざまな問題がひそんでいます。この章では、健康リスク以外に考えられるいくつかの問題について具体的に見ていきましょう。50時間残業が日常になっている方は、すでに生じている問題もあるかもしれません。

3-1. プライベートの時間が作れない

残業が月50時間の場合、単純に計算すると1日の残業時間は「2.5時間」程度となります。勤務時間が「9時~18時(休憩1時間)」の会社を想定すると、退社できるのは20時30分ころになるでしょう。

退社をしてから帰宅するまでの時間もかかるため、プライベートな時間を作るのは難しく、リフレッシュする余裕もないのではないでしょうか。仕事のある日はプライベートの時間が作れないだけではなく、休日も過労によって眠るだけで終わってしまうということも考えられます。

3-2. 家族と接する時間が減る

残業によって帰宅時間が21時を過ぎるような毎日では、家族とコミュニケーションをとる時間も減ってしまうでしょう。家族でそろって夕食を食べるのも、難しいかもしれません。

特に小さな子どもがいる場合は、帰宅する時間にはすでに子どもが寝ていて話もできない、といったこともあるでしょう。たまにならば仕方がないと思えるかもしれませんが、これが毎日となると家族関係に影響する可能性もあります。

3-3. キャリアアップのための勉強時間が作りにくくなる

将来やりたいことに関する勉強や、スキルアップ・キャリアアップのための勉強をしたいと考える方も多いでしょう。プライベートな時間がなくなるということは、そういった勉強にかける時間もなくなるということです。

自己投資のための時間をつくれないのは、大きな損失といえます。会社から資格取得を推奨されても残業が多くて勉強できないということも考えられる問題です。

3-4. 家事などが疎かになる可能性が高くなる

残業に追われる忙しい毎日では、家事も疎かになってしまいがちです。疲れて夜遅くに帰宅してから家事を行うのは大変なだけではなく、睡眠時間をけずり朝早く起きて家事をするというのも簡単ではないでしょう。

休日も、残業の反動で思うように体が動かず家事どころではないかもしれません。このように時間や心に余裕がない状態では、身だしなみも乱れやすくなってしまいます。

3-5. 冠婚葬祭などイレギュラー対応が難しい

最後に問題として挙げられるのが、「冠婚葬祭などの緊急時に準備が行いにくい」ということです。残業が詰め込まれている状況では、大事な場にしっかりと準備をして余裕をもって臨むことも難しいでしょう。

残業時間が多いということは、与えられている仕事量が多いということです。冠婚葬祭で休んだ分、その後にたまった仕事を処理するのにも残業をしなければならなくなる可能性もあります。

4. 月50時間以上の残業はもしかして違法?


月に50時間以上残業すると、体だけではなく家庭にまで影響を及ぼすこともあります。残業にはさまざまなリスクや問題点がありますが、50時間の残業は「違法」にはならないのか気になる方もいるのではないでしょうか。この章では、50時間残業が違法となるケース、ならないケースについて、わかりやすく解説します。

4-1. 36協定の締結・届出がなければ1分でも違法

まず、会社と労働者との間で「36協定(サブロク協定)」が締結されていなければ、たとえ1分であっても残業自体が違法になることを知っておきましょう。

労働基準法では「原則として1日8時間・週40時間」という労働時間の制限を定めています。これを超えて働かせるには、36協定を結んで行政官庁へ届け出なければなりません。この条件をクリアせずに残業させた会社は違法となり、罰則が科せられることもあります。

4-2. 月50時間の残業は時間外労働の上限を超えている

残業をさせるには36協定の締結・届出が必要ですが、この条件をクリアすればいくらでも残業をさせられるわけではありません。残業時間には「月45時間・年360時間」という上限が設けられており、36協定を結んでいる場合でもこの上限を超えると違法になります。

月50時間の残業はこの上限を超えているため、違法になるということです。ただし違法にならないケースもあるため、次の項目で詳しく解説します。

4-3. 月50時間の残業が合法のケースは限られている

残業の上限時間を超えている「月50時間の残業」が違法にならないケースは、「特別条項付き36協定」を締結している場合です。

特別条項付き36協定とは、通常の36協定で定められた上限を超えて臨時的・突発的に残業する必要が出てしまったときに備え、あらかじめ延長時間を定めておく協定をいいます。つまり、残業時間上限の延長が許される協定ということです。

ただしこの場合にも「月45時間を超えていいのは年6回まで」などいくつかの条件があり、条件に反した場合も違法になります。

5. 50時間以上の残業を改善するための方法

50時間以上の残業は平均の約2倍です。もし常態化している場合、健康に問題が生じることもあるでしょう。そこでこの章では、長時間残業を改善するための対策をご紹介します。体を壊したり精神を病んだりする前に、ぜひ以下のような対策を行ってください。

5-1. 働き方の見直し

まずは自分の働き方を見直してみるのも有効な対策です。見直すといってもいろいろな方法がありますが、一番は「仕事の効率を上げる」ことが大切といえます。自分が集中できる環境をつくる、ルーティン作業は時間を測りながら行う、などさまざまな方法を試しながら効率を追求してみましょう。それだけで残業が減るかもしれません。

「残業はあたり前」「多少の残業は仕方ない」といった考えがあると、早く終わらせられる仕事も終わらないでしょう。意識改革も残業を改善する方法です。

5-2. 仕事の優先順位の決定

仕事に優先順位をつけることも有効な対策です。目の前の仕事をただ順繰りにこなしていくのではなく、「重要なもの」「早めに片付けなければいけないもの」から先に取りかかるようにしましょう。そうすることで仕事にメリハリがつくほか、終業時間になってもやらなければならない仕事がたくさん残っているという状況を防げます。

5-3. 労働基準監督署に相談

50時間以上の残業が違法にあたるケースであれば、労働基準監督署に相談するという方法も有益です。調査によって法律違反が認められれば、是正勧告が行われます。それによって労働環境が改善されるかもしれません。

ただし実際には、解決にいたらないケースが多いことも知っておきましょう。労働基準監督署は慢性的に人員不足であり、なかなか動いてくれないことも多いのが実情です。ひとつの方法として頭に入れておく程度がよいかもしれません。

5-4. 残業時間の少ない会社に転職する

自分の働き方を改善しても、労働基準監督署に相談しても、一向に残業状況が変わらないという場合は思い切って転職をするのもひとつの方法です。今の会社よりも残業が少ない会社はあるでしょう。転職をする際は、残業の扱いについて求人情報に明記している会社を選ぶこともポイントです。

長時間残業が長く続いて疲労が蓄積されれば、心身に問題が生じることもあります。自分の健康を第一に考えて、後悔のない選択をしましょう。

6. 50時間以上の残業代請求の流れ


長時間残業を強いられているうえに残業代がきちんと支払われていない場合は、会社に対して未払い残業代を請求しましょう。この章では、本来支払われるべき残業代の金額を把握するための計算方法や、請求手続きの流れについて詳しくご紹介します。

6-1. 残業代の計算方法

正しい残業代は、以下の計算式で算出できます。

残業代=1時間あたりの賃金×割増率×残業時間

1時間あたりの賃金は、月給制の場合【月給÷1か月の平均所定労働時間】で求めましょう。割増率は、通常残業であれば「1.25」、深夜残業(22時~5時)であれば「1.5」、法定休日労働であれば「1.35」、法定休日+深夜残業であれば「1.6」です。これらの数字に実際の残業時間をかけて、本来支払われるべき残業代を算出しましょう。

6-2. 残業に関する情報を収集

残業代の算出と同じく最初のステップで行いたいのが、「情報収集」です。残業の事実や残業時間の証明になる証拠資料集めに加え、時効がいつになるのかもしっかり把握しておきましょう。

証拠資料は、残業代請求を成功させるカギとなる重要なものです。時効についても、過ぎてしまったら請求自体が行えません。必要な情報を収集し、準備を整えてから請求手続きを進めましょう。

6-3. 内容証明の郵送

自分で残業代請求を行う場合は、会社に対して「内容証明郵便」を送ります。これは、文書の内容などを日本郵便が証明してくれる特別な郵便です。内容証明で請求書を送ることによって、会社は「そのような請求はされていない」といい逃れることができません。内容証明には、以下の内容を記載しておきましょう。

・自分の氏名、住所
・会社名、所在地
・雇用契約内容
・残業の事実、残業代が未払いになっている事実
・上記事実の証拠があること
・残業代の額
・請求する額、支払い期限
・口座情報

6-4. 会社との交渉

内容証明を送ったら、会社と交渉を進めます。未払いになっている残業代をきちんと支払うよう求めましょう。交渉によって会社が未払い残業代を支払ってくれれば、完了です。

自分で内容証明を送って交渉しても、うまくいくかどうかはわかりません。会社の顧問弁護士にうまく丸めこまれてしまうことが多いのも実情です。確実に残業代を取り戻したいのなら弁護士に依頼することをおすすめします。

6-5. いざというときに備えて弁護士の依頼も検討

弁護士が出てくることで会社の対応が真剣になるでしょう。専門知識と適切な法的処理によって巧みに交渉を進めてくれるため、自分で請求するよりも成功確率が上がります。取り戻せる金額もアップするでしょう。

弁護士に頼めば自分ですることは格段に減るため、手間がかかりません。会社と交渉する心的負担も軽減できます。裁判になったときにも弁護士にそのまま任せることができ、安心です。弁護士に依頼するメリットは大きいでしょう。

6-6. 労働基準監督署に協力を仰ぐ

労働基準監督署は会社の労働環境に違法性が確認できれば是正勧告を行ってくれます。残業代の未払いは違法なため、労働基準監督署に相談・報告することも大切でしょう。

ただし実際に動いてくれるかはわからず、労働基準監督署は支払いを強制する権能をもっているわけではありません。そのため、「残業代を支払ってもらう」ということを第一に考えたときに現実的なのは、弁護士に依頼して請求することといえます。

7. まとめ


50時間残業はプライベートな時間が作れないだけではなく、心身の健康状態にも悪影響を与えます。未払い残業代を請求するなら、法律の専門家である弁護士に依頼することがおすすめの方法です。弁護士に依頼することで、未払い残業代を取り戻す成功確率がアップするでしょう。

ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功/不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るか分からない中で、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。

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