2020/06/22

【弁護士監修】強制残業が断れる場合と断れない場合がある!残業命令が出たときの対処法とは?

執筆者 編集部
残業代関連

度重なる残業に疲弊している毎日を過ごす中で「残業を断ってはいけないのだろうか……」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。時間内にこなせる量をはるかに多く任されて業務が終わらず、必然的に残業をしなければならない状態の方もいるかもしれません。

そこでこの記事では、残業を断れるケースと断れないケースについて詳しく解説します。不当な強制残業の「対処法」も身につけましょう。つらい残業にお困りの方は、ぜひ参考にしてください。

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

 

1. すべての残業を断れるわけではない


まずこの章では、残業を断れないケース(会社が残業を強制できるケース)について、具体的にご説明します。会社が従業員に残業させるには、2つの条件をクリアしなければなりません。条件を把握するだけではなく、労働契約や就業規則を確認することも重要です。

1-1. 会社が労働者に残業をさせることができる場合

会社が労働者に残業をさせるには、「会社と労働者側との間で36協定(サブロク協定)が締結されていること」が前提になります。

36協定とは残業を可能にするために労使者間で結ぶ協定です。36協定を結んでいないにもかかわらず強制的に残業をさせることは、違法になります。この協定を結んだ後は労働基準監督署への届出もしなければなりません。

協定を結んでいることが、会社が労働者に残業を指示できる前提となりますが、この条件さえクリアしていれば残業を命令できるというわけではありません。次の項目で詳しくご説明します。

1-2. 就業規則などに残業についての規定がある場合も断れない

36協定の締結だけでは強制的に残業をさせられない理由は、36協定に加え、労働契約上で残業の規定が設定されていることが必要なためです。

具体的には、就業規則などに「残業命令についての規定(36協定の範囲内で残業を命じることができる旨など)」が書かれている必要があります。また、その就業規則などは周知されていなければなりません。周知とは、従業員が自由に閲覧できる状態を指します。

「36協定を締結している」「就業規則などに残業に関する規定がある」この2点をクリアして、会社は残業させることができるということです。しかし、従業員が残業を断れる「例外ケース」があるので、次の章で詳しく解説します。

2. 残業を断れる場合

会社が残業を命令できる(必要な条件をクリアしている)場合であっても、労働者が断ってよいケースがあります。正当な理由がある場合はきちんと会社に伝えましょう。体調不良や育児といったやむを得ない事情であれば、残業を断ることが可能です。ここでは残業を断ることができるパターンについて解説します。

2-1. 残業命令は正当な理由があれば断れる

会社が残業を強制できる場合においても従業員が断れるケースとは、「正当な理由があるケース」です。具体的には、「体調不良である」「妊娠中である、出産から1年未満である」「介護や育児がある」といったものが挙げられます。

これらの理由のうち、どれかひとつでもあてはまる場合には残業を断っても問題ありません。正当な理由があっても会社と事実を共有できていない場合は残業命令が出される可能性があるため、事情を詳しく説明することが大切です。

2-2. 正当な理由1.体調不良

ケガや病気などの体調不良がある場合は、会社の残業指示が正当なものであっても断れるのが通常です。過去に行われた裁判においても、「眼精疲労」という理由で残業を拒否したことによって解雇された労働者が解雇無効を訴え、勝訴しています。

何日も続けて残業を断りたい場合は、正当な理由があることを示すために病院に診断書を出してもらうのがおすすめです。会社とのトラブルの予防にもなります。

2-3. 正当な理由2.妊娠中や出産から1年未満

妊娠している場合は、会社の正当な残業指示に対しても拒否できます。出産してから1年経っていない場合も同様です。

断ったにもかかわらず残業を強要してきた場合、会社は処罰の対象となります。「妊産婦が残業命令を断った場合、会社は残業させることができない」といった内容が労働基準法(第66条2項・3項関係)で定められているためです。

2-4. 正当な理由3.介護や育児がある

「家族の介護」「子どもの育児」も残業を断れる理由のひとつです。具体的には、3歳未満の子どもの育児をしなければならない場合は、会社から正当な残業指示を受けても断れます(育児介護休業法第16条の8)。

小学校に入学する前の子どもの育児が必要な場合、要介護状態の家族の介護が必要な場合は、1か月24時間・1年150時間を超える残業(時間外労働)は断れます(育児介護休業法第17条・18条)。断っても残業を強要した場合は処罰の対象です。

2-5. 正当な理由4.残業がそもそも違法である場合

これまでの理由は「会社の残業指示が正当な場合(必要な条件をクリアしている場合)においても従業員が残業を断れるケース」でしたが、ここで紹介するケースは自身の事情は影響しません。36協定が締結されていない、就業規則が周知されていないなど、会社が必要な条件をクリアしておらず「残業指示が不当(違法)な場合は断ってもよい」というものです。

会社が正当に残業を指示できる条件をクリアしていても、残業が違法になる場合があります。残業代の未払いがある場合や、上限を超えた残業を指示している場合です。このような場合にも、残業指示に従う必要はありません。

3. 会社からの強制残業を強いられたときは……

会社に指示された残業を断りたいときには「労働契約書や36協定を確認する」「自分に断れる理由かあるかどうかを確認する」という2つのポイントが重要です。強制残業を強いられたときには、この2つのポイントを確認することで正当に残業を断れることもあります。

3-1. 労働契約書や36協定などを見る

会社が労働者に残業させるには、「36協定」を締結して行政官庁へ届け出ていなければなりません。また労働契約書や就業規則に「残業命令に関する規定(36協定の範囲内で残業を命じることができる旨など)」が書かれていなければならず、その就業規則が周知されている必要もあります。

会社から残業を強いられたら、まずは条件をすべて満たしているかチェックしましょう。どれかひとつでも満たしていなければ残業の指示は違法であり、従う必要はありません。

3-2. 断れる理由があるかを確認する

「36協定の締結→届出」「労働契約書や就業規則における規定→周知」という必要な条件をすべて満たしていて、残業代未払いなどの違法性もない場合は、会社の残業指示は正当なものであり基本的には断れません。

しかし「正当な理由」がある場合には残業は断れます。下記のような残業を断れるケースに自身があてはまるかを確認しましょう。これらの理由がある場合には理由をきちんと会社に伝えることで、残業を断れます。

・体調不良
・妊娠中
・出産から1年未満
・介護や育児の必要がある

4. 強制残業の対処法


会社の残業指示が不当(違法)であるにもかかわらず残業を強制される場合や、正当な理由があって断っているにもかかわらず強制される場合の対処法を詳しく解説します。不当な強制残業にお困りの方はぜひ参考にしてください。

4-1. 弁護士に依頼する

まず考えられる方法は、法律の専門家である弁護士に相談することです。相談者の状況に合った最適な解決法をアドバイスしてもらえます。

未払い残業代が発生している場合は、弁護士に解決を依頼するのがおすすめです。これまで発生している残業代を正確に計算し、適切な法的処置と有効な交渉によって会社から未払い残業代を取り返してくれるでしょう。弁護士はこの手の問題のプロであり、予想以上の金額が返ってくることもあります。

自分で手続きや交渉をしなくてよいため手間も精神的負担もかからず、メリットは大きいでしょう。未払い残業代が少しでも発生している方、正確にはわからなくても発生しているかもしれないという方は、一度相談してみることをおすすめします。

4-2. 労働基準監督署に相談する

労働基準監督署への相談・申告により動いてくれることになった場合「立ち入り調査」が行われ、違法行為が確認されれば「是正勧告」がされます。是正勧告を重ねても従わなければ「送検」されることもあるでしょう。

しかし、すぐに動いてくれるとはかぎりません。人員不足が続いている機関であり、すべての案件に手が回っていないためです。優先されるのは命に関わるような重大な案件であり、そうでない案件は後回しにされたり、最後まで動いてもらえなかったりします。実際は解決にいたらないケースも多いということも把握しておきましょう。

4-3. 転職する

強制残業が改善されない場合は、転職をするのもひとつの方法です。残業時間が長く心身の負担を感じているようなケースでは、そのまま我慢していては健康被害が出てくることもあるでしょう。見えないところですでに出ているかもしれません。

一番大切なのは自分の体です。残業が少ない会社への転職も視野に入れて、この機会に自分とよく向き合って今後のことを考えてみましょう。

5. 残業代未払いなら特に注意が必要

強制残業が多い会社の場合、未払い残業代が発生している可能性が高いといえます。本来もらえるはずの残業代は、会社に請求してきちんと支払ってもらいましょう。

ただし、残業代の請求には「2年」という時効があるため注意が必要です。2年という時効は、労働基準法の改正により2020年4月1日以降に発生する残業代については3年に延長されましたが、2022年4月1日より前の時点では2年より前に発生した残業については、原則請求ができません。損をしないために、なるべく早めに動きましょう。

また、自分で請求するよりも弁護士に任せたほうがさまざまな面でメリットがあります。弁護士費用が心配な方は、着手金が0円になる『アテラ 残業代』にご相談ください。

6. まとめ


残業は正当な理由があれば断ることが可能です。育児や介護、体調不良の場合はしっかりと伝え、会社と残業ができない事実を共有しましょう。未払い残業代がある場合は弁護士に依頼すると、取り返せる可能性が高くスムーズに進められます。

ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功/不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るか分からない中で、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。

そんな方におすすめなのが『アテラ 残業代』です。
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