2020/03/24

【弁護士監修】残業手当が出る時間帯や計算方法まとめ!未払い残業手当を請求するにはどうすればいい?

執筆者 編集部
残業代関連

会社に勤める方が当たり前に行っているといっても過言ではない残業ですが、残業手当について正しく理解している方はそれほど多くないでしょう。なかには、「きちんと残業手当が支払われているかどうかわからない」という方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、残業手当の基礎知識から計算方法、未払い残業手当の請求方法までわかりやすく解説します。記事の内容を理解すれば、未払い残業手当を請求できるようになります。ぜひ参考にしてみてください。

【監修】鎧橋総合法律事務所 早野述久 弁護士(第一東京弁護士会)

監修者プロフィール
・株式会社日本リーガルネットワーク取締役
監修者執筆歴
・ケーススタディで学ぶ債権法改正、株主代表訴訟とD&O保険ほか

1. 残業の基本


まずは残業の基本を確認しましょう。ここでは、「違法になるケースはあるのか」「超えてはいけない上限時間はあるのか」といったポイントについて、わかりやすく解説します。残業手当について正しく理解するためにも基本的な知識をおさえておきましょう。

1-1. 36協定を締結していない場合の残業は違法

会社勤めをしていて、「まったく残業をしたことがない」という方は珍しいかもしれません。それほど当たり前になっている残業ですが、「36協定(サブロク協定)」を締結していない場合は残業自体が違法になることをご存知でしょうか。

36協定とは会社と労働者の間で結ぶ協定で、残業を公的に認めてもらうために必要なものです。36協定を結んでいない場合、会社は従業員に残業をさせることができません。させた場合は、すべて法律(労働基準法)違反となります。

(参考:『36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針』

1-2. 36協定を締結している場合の残業上限時間

36協定を結んでいても、残業が際限なく認められるわけではありません。「月45時間・年360時間」という上限が設定されており、これを超えると違法になります。
「特別条項付き36協定」を締結している会社では、臨時的な特別の事情がある場合に限って上限の延長が可能です。ただし、特別条項付き36協定にも上限があり、超えた場合は違法になります。上限は以下のとおりです。

・年720時間以内
・月100時間未満(休日労働含む)
・2か月~6か月平均が1月あたり80時間以内(休日労働含む)
・月45時間を超えていいのは1年のうち6か月まで

(参考:『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』
(参考:『働き方改革特設サイト(厚生労働省)』

2. 残業手当が出る時間

残業手当についても見ていきましょう。残業手当(時間外手当)は「残業(時間外労働)」に対して支払われるものです。

残業(時間外労働)は2種類あり、「法定時間外労働(法定労働時間を超えた労働)」と「法定時間内残業(法定労働時間内における所定時間外労働)」があります。

法定労働時間とは法律で定めた労働時間の基準で、具体的には「1日8時間、週に40時間を超えてはいけない」と決められています。これを超えると法定時間外労働となり、割増賃金付きの残業手当が支払われる対象になります。

他方で、会社で決められた所定労働時間を超えても、法定労働時間を超えていなければ、法定時間内残業となり、基礎賃金分の残業手当の対象にはなるものの、割増賃金の対象にはなりません。

以下では、残業(時間外労働)のうち、法定時間外労働を前提に解説することとします。

3. 特殊な労働時間の場合の残業時間はいつ?


「残業(時間外労働)」に対して支払われるのが残業手当と説明しましたが、時間外労働に該当するか判断がつきにくい特殊な労働形態の場合はどうなるのでしょうか。

この章では、3種類の特殊な労働形態を取り上げ、それぞれの場合における時間外労働と残業手当の考え方について解説します。

3-1. 毎月シフトで勤務の「変形労働時間制」の場合

この制度では、「1日」ではなく「1か月」「1年」といった単位で労働時間を計算します。それぞれの単位の中で労働時間が調整できていればよいので、1日8時間を超えたからといってすぐに時間外労働とはなりません。

たとえば1か月単位の変形労働時間制を採用している場合、時間外労働となるのは以下の法定労働時間を超えた時間になります。

・28日の月「160.0時間」
・29日の月「165.7時間」
・30日の月「171.4時間」
・31日の月「177.1時間」

1年単位の場合、法定労働時間は以下のとおりです。
・365日の年「2085.7時間」
・366日の年「2091.4時間」

この制度は、繁忙期や閑散期がある(忙しさにバラつきがある)業界や職種で残業代を抑えるための対策として採用されることがあります。
(参考:『1ヵ月又は1年単位の変形労働時間制』

3-2. みなし残業の場合

「みなし残業」とは、実際に残業したかどうかに関係なく、固定の残業代が支給される制度です。固定残業代制とも呼ばれ、「月25万円(45時間分の固定残業代5万円含む)」といったように「想定残業時間」「固定残業代」をあらかじめ定めておきます。

「固定残業代制だから実際に何時間残業しても残業手当は必要ない」といった勘違いもあるようですが、想定残業時間を超える労働に対しては追加の残業手当を支給しなければなりません。

なお、営業職や運転手に採用される「事業場外みなし労働」という制度もあります。似たようなネーミングですが、「何時間働いたかに関係なく、あらかじめ定めた時間だけ働いたとみなす」制度であり、固定残業代制とは別物なので注意しましょう。

3-3. 最近増えてきた「フレックスタイム制」の場合

「フレックスタイム制」とは、出退勤時間が具体的に決まっていない自由度の高い労働形態です。3か月以内の一定期間(週、月など)を「清算期間」とし、清算期間における「総労働時間」を決めます。その枠内であれば、自由に出退勤時間を設定できます。多くの場合、必ず出勤しなければならない「コアタイム」を設けるようです。

制度の特性上、1日単位で残業時間は計算されません。清算期間の総労働時間を超えた労働に対して残業手当が支給されます。

(参考: 『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』
(詳しくは厚生労働省のHPをご覧ください。)

4. 残業手当の計算方法


実際に残業手当を求める計算方法を見ていきましょう。まずは、基本となる計算式を確認します。

【残業手当=1時間あたりの賃金額(時給)×割増率×時間外労働時間】

この計算式に数字を当てはめれば、残業手当が算出できます。ここでは、それぞれの数字を求める方法について解説します。

(参考:『割増賃金の基礎となる賃金とは?』

4-1. 時給を算出する方法

月給制の場合、1時間あたりの賃金は以下の式で求められます。

【月給÷1か月の平均所定労働時間】

また、月給に含めてよい手当と含まれない手当があるので注意しましょう。含めてよいのは「役職手当」「職務手当」「業務手当」「地域手当」「調整手当」などで、含まれないのは「通勤手当」「家族手当」「子女教育手当」「住宅手当」「賞与」「結婚手当」といった手当です。

1か月の平均所定労働時間は【1日の所定労働時間×1年の所定労働日数÷12か月】で求められます。

4-2. 時間外労働の割増賃金は1.25倍

1時間あたりの賃金を求めたら、その数字に「割増率」をかけましょう。時間外労働に対する割増率は「1.25倍」です。つまり、時間外労働に対しては「通常の1.25倍の賃金」が支払われます。1.25倍の割増賃金に実際に行った時間外労働時間をかければ、トータルの残業手当が算出できます。
なお、割増率は時間外労働の条件によって異なるので注意しましょう。条件別の割増率は以下のとおりです。

・「深夜時間帯(22時~翌朝5時)」にあたる時間外労働:1.5倍
・「法定休日」にあたる時間外労働:1.35倍
・「法定休日+深夜時間帯」にあたる時間外労働:1.6倍

上記の条件に当てはまる時間外労働の場合、それぞれの割増率をかけて計算しましょう。
なお、上記のとおり、法定時間内残業の場合、割増率は「1倍」となります。

5. 正当な残業手当を請求するためには?


残業手当を計算してみた結果、「実際にもらっている額と違った」という方もいるのではないでしょうか。正当な残業手当が支払われていない場合、会社に対して未払い残業手当の請求ができます。

この章では、未払い残業手当を取り戻すために知っておきたいポイントをまとめました。ぜひチェックしてみてください。

5-1. 残業した証拠を集める

未払い残業手当を取り戻すには、「実際にどのくらい残業していたか」を証明する証拠資料が重要となります。

証拠として使えるのは、「タイムカード」「労働時間管理ソフト」「日報」「各人に支給されたパソコンの使用履歴」「ファックスの送信記録」といったものがあります。仕事上のメモや日記、帰宅時に家族へ送ったメールも証拠となる場合があるので探してみましょう。残業時間を計測できるアプリを利用している場合、そのデータも有効です。

残業時間だけでなく、支払い額の証拠もポイントになります。「給与明細」が手元にないという方は、再発行を依頼しましょう。さらに、労働条件が書かれている「就業規則」「雇用契約書」も証拠になります。

(参考:残業証拠レコーダーアプリ 『ザンレコ』

5-2. 会社と交渉する

証拠を集めたら、まずは会社と直接交渉するのもひとつの手でしょう。具体的には、未払いの金額や支払いを要求する旨を記載した「通知書」を作成し、郵送する方法があります。

会社が何も対処してくれない、何の反応もないといった場合には、内容証明郵便を利用するのがおすすめです。内容証明郵便とは文書の内容を郵便局が公的に証明してくれるサービスで、万が一、裁判や労働審判に発展したときには有効な証拠となります。

しかし、このような直接的な交渉を行っても、会社がきちんと対応してくれるケースはあまり多くありません。なかには、不当な扱いを受けるようなケースもあるようです。もちろん違法行為ですが、実際にそのようなケースがあることは知っておきましょう。

5-3. 【注意】2年の時効がある

未払い残業手当の請求には「2年」という時効が設定されています。労働基準法で定められているので、覚えておきましょう。そのため、請求を考えている方はすぐにでも動き出すことをおすすめします。時効が成立すると、二度と請求できなくなってしまいます。

悩んでいる間にも時効は近づいてきます。「決心がつかない」「もう少しタイミングを待ちたい」という方も、まずは証拠資料だけでも集めておきましょう。

(参考:『労働基準法』

5-4. 専門知識のある弁護士への相談がおすすめ

未払い残業手当を取り戻したいなら、弁護士に依頼するのがおすすめです。自分で交渉して請求するのはうまくいかないことも多く、きちんと取り戻せるかどうかわかりません。

法律の専門家である弁護士なら、本来支払われるべき残業手当を正確に算出し、交渉も有利に進めてくれます。証拠資料がない場合も適切に対処してくれるでしょう。また、弁護士が登場すれば、会社の対応も真剣になります。このように、弁護士に相談するメリットは多岐にわたります。

6. 資金がなくても相談できる『アテラ 残業代』を活用しよう

未払い残業手当の請求は弁護士に依頼するのが最もおすすめですが、費用がどのくらいかかるのか心配という方も多いのではないでしょうか。

そのような方におすすめしたいのが、着手金を立て替えてくれるサービス『アテラ 残業代』 です。最初に資金がいらないうえ、残業手当が返ってこなかった場合、立て替え着手金は実質返済する必要がありません。つまりリスク0で未払い残業手当の請求ができます。「取り返せなかった場合に弁護士費用分の損をするのが嫌だ」というときの強い味方です。

7. まとめ


今回は、残業手当の基礎的な知識や計算方法に加え、未払い残業手当がある場合には会社に請求できることをお伝えしました。「知らなかった」という事実も多かったのではないでしょうか。未払い残業手当を請求するなら弁護士に依頼するのがおすすめです。会社側と対等に交渉を進められるでしょう。

ただし弁護士に依頼する場合、残業代請求の成功/不成功にかかわらず、最初に依頼するための着手金が必要な場合が多々あります。残業代請求が通るか分からないなかで、弁護士に数十万円を最初に渡すのは抵抗がある方も多いかもしれません。

そんな方におすすめなのが『アテラ 残業代』 です。
① 『アテラ 残業代』では、弁護士の着手金を立替えてくれるので、お手元から現金を出さずに、弁護士に着手金を払って依頼することができます。
② さらに、『アテラ 残業代』を利用すると、敗訴した場合や会社からお金を回収できなかった場合には、立替えてもらった着手金を実質返済する必要がないので、リスク0で残業代請求を行うことができます。
残業代請求をするときのリスクは、最初の着手金を支払うことで敗訴したときに収支がマイナスになってしまうことですが、『アテラ 残業代』を利用することでそのリスクがなくなります。

着手金にお困りの方、残業代請求のリスクをゼロにしたい方は、ぜひ『アテラ 残業代』 をご利用ください。

なお、着手金支払いの負担・リスクではなく、どの弁護士に頼むかでお悩みの方は、ぜひ株式会社日本リーガルネットワークが運営するWebサイト『残業代・解雇弁護士サーチ』 の弁護士検索機能をご利用ください。

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