2017/12/07

【完全保存版】残業代請求に関して知っておくべき情報(弁護士が解説)

執筆者 編集部弁護士
残業代関連
労働基準監督署は残業代請求について相談したら何をしてくれるのか?

会社で残業した場合、会社から残業代・残業手当を支払ってもらうことができます。そして、会社から支払われた残業代・残業手当が、法律上の残業代よりも少ない場合には、会社に対して差額を請求することができます。

しかし、そもそも残業代が支払われる残業とは何か、法律上の残業代をどのように計算すれば良いか、会社に対してどのようにして残業代を請求すればよいのかが分からなくて、残業代の請求をあきらめてしまっている方は多いのではないでしょうか。

今回は、残業代に関して労働者の方が知っておいた方がよい情報をまとめました。

(編集部注:残業代の未払いがある方は、残業代・解雇弁護士サーチでお近くの弁護士に相談してみよう!)

1. 残業の種類

1-1. 法外残業と法内残業の意味

残業(時間外労働)には、「法外残業(法定時間外労働)」と「法内残業(法定時間内残業)」の2種類があります。
法外残業(法定時間外労働)」とは、労働基準法で定められた労働時間(原則は1日8時間、1週間40時間)を超えて行われた残業のことをいいます。

これに対し、「法内残業(法定時間内残業)」とは、労働基準法で定められた労働時間以内であるものの、雇用契約や就業規則等で定められている勤務時間(所定労働時間)を超えて行われた残業のことをいいます。
例えば、勤務時間が午前10時から午後5時まで、休憩時間が1時間と定められている場合、所定労働時間は1日6時間ということになります。
このケースで、ある日に午後9時まで残業を行ったとすると、午後5時から午後7時までの2時間の残業は、労働基準法で定められた労働時間(8時間)以内の範囲で、所定労働時間を超えて行われた残業であるため、「法内残業(法定時間内残業)」となります。
また、午後7時から午後9時までの2時間は、労働基準法で定められた労働時間(8時間)を超えて行われた残業であるため、「法外残業(法定時間外労働)」となります。

1-2. 割増賃金の有無

以上で述べた2種類の残業のうち、労働基準法によって割増賃金(基礎賃金の1.25倍)の支払義務があるのは、法外残業だけです。

法内残業については、労働基準法上、割増賃金の支払義務は定められていないため、法内残業を行った場合の残業代は、労働契約または就業規則に定められた割増率に基づいて計算することとなります。一般的には、法内残業であっても、法外残業と同様に、割増賃金を支払うこととされているケースが多いです。
仮に、法内残業の取り扱いについて雇用契約や就業規則に書いていない場合、法外残業とは異なり、法定内残業の場合は1.25倍の割増率を掛けることはありません。単純に、残業時間に1時間あたりの基礎賃金を掛けて、残業代を計算します。

なお、常時10人以上の労働者(アルバイト等を含みます。)を使用する事業所では、就業規則が作成されているはずですので、一度、ご自身の職場の就業規則を確認してみるとよいでしょう。会社によっては、賃金に関する事項を就業規則本体ではなく賃金規程に定めているところもありますのでご注意ください。

(編集部注:割増賃金が適切に払われていないのかも?と思ったら、残業代・解雇弁護士サーチでお近くの弁護士に相談してみよう!)

2. 残業代の計算方法

残業代は、以下の計算式で計算します。

残業代=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率

既に述べたとおり、法内残業の残業代を計算する際に割増率を掛けるかは、労働契約または就業規則の定め次第です。

2-1. 残業時間

上記の計算式のとおり、残業代を計算するには、まずは残業時間がどれくらいかを知る必要があります。

労働基準法で定められた労働時間以内であるものの、所定労働時間を超えて行われた労働時間が法内残業の残業時間になります。

また、原則的には、1日8時間を超えて行われた労働時間と1週間40時間を超えて行われた労働時間の合計が法外残業の残業時間になります。

※ 小売業等の小規模な事業場では、法定労働時間が1週間で合計40時間ではなく、1週間で合計44時間となる例外もありますので、ご注意ください。
※ 就業規則等に特に定めがなければ、日曜日から土曜日までの「暦週」を1週間として計算します。

残業時間は、実際に労働した時間(実労働時間)をもとに計算されますので、休憩時間や遅刻・早退等によって実際に勤務していなかった時間は除外しなければなりません。

また、残業時間(労働時間)は、原則として、1分単位で計算しなければならず、一律に端数を切り捨てるといった処理は許されていません。
例外として、労働時間の端数処理として、1か月の労働時間を通算して30分未満の端数が出た場合には切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げて計算することは認められています。ただし、この端数処理を毎日の労働時間について行うことは認められていません。

2-2. 1時間あたりの基礎賃金

1時間あたりの基礎賃金は、残業1時間につき、基本的に何円もらえるかという金額のことで、いわば「時給」のようなものです。
1時間あたりの基礎賃金は、普段の給料から決まる「基礎賃金」の額を、1時間あたりに割って、計算します。
例えば、月給制の場合は、月の基礎賃金の額を、就業規則などで決まっている1か月間の労働時間(所定労働時間)で割ります。

1時間当たりの基礎賃金=月給÷1か月あたりの平均所定労働時間

ただし、月によって日数や土日の数が違いますから、1か月間の所定労働時間は毎月違うのが通常です。この場合、1か月間の平均所定労働時間を1年間の平均から求めます。

具体的には、以下の計算式で計算します。

1か月間の平均所定労働時間=1日の所定労働時間×(365-年間所定休日数 )÷12か月
※閏年の場合は366日で計算します。

ここでいう「基礎賃金」(月給)には、次のものは含まれません。

1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)
通勤手当
住宅手当
家族手当
別居手当
子女教育手当
臨時に支払われた賃金

2-3. 残業代の割増率

2-3-1.法外残業の割増率

実際の労働時間が法定労働時間(1日8時間、1週間で合計40時間)を超えた場合、その法外残業については、割増率を1.25倍として残業代を計算します。

中小企業ではない大企業では、法定休日以外の実際の労働時間が法定労働時間を1か月あたり60時間以上超えた場合、その60時間を超えた部分の残業については、割増率が高くなります。
この場合、1か月あたり60時間を超える部分の割増率は1.5倍として計算します。

2-3-2. 休日労働の割増率

休日労働には、「法定休日」に行われた労働と「法定外休日」に行われた労働の2種類があります。
ここで、「法定休日」とは、労働基準法によって定められた週1日の休日をいい、「法定外休日」とは、それ以外の労働契約または就業規則で定められた休日をいいます。
1週間に複数の休日がある場合に、どの休日が「法定休日」に、どの休日が「法定外休日」になるかは、就業規則等に規定があればそれに従うことになります。就業規則等に定めがない場合は、一般的には「歴週(日曜→土曜)による1週間のうちで最も後順に位置する休日」を法定休日とするという解釈がとられています。

「法定休日」に働いた時間は全て残業時間になります。
法定休日に労働した場合、残業時間に1時間あたりの基礎賃金を掛け、その上さらに1.35倍の割増率を掛けて、残業代を計算します。

これに対し、「法定外休日」の労働については、通常の勤務日における残業と同様に1.25倍の割増率によって残業代を計算することとなります。

2-3-3. 深夜労働の割増率

午後10時から午前5時までの深夜の時間帯に労働した場合は、0.25倍の割増賃金の支払いが義務づけられています。
したがって、法外残業が、深夜(午後10時から午前5時まで)である場合には、割増率を1.25倍ではなく1.5倍として、残業代を計算します。
また、法定休日の労働が深夜残業でもある場合は、割増率を1.35倍ではなく1.6倍として、残業代を計算します。

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3. 残業代請求の方法

3-1. 残業代請求の一般的な流れ

残業代請求は、一般的に、①示談交渉、②労働審判、③訴訟(いわゆる裁判)の順で行います。

① 示談交渉
示談交渉とは、会社との交渉です。かかる時間は、弁護士に依頼した場合、2~3か月程度のことが多いでしょう。
多くの場合、この示談交渉で残業代を払ってもらえます。この場合、通常は、互いに残業代を請求したことを他人に話さないという契約(守秘義務契約)を会社と結びます。

② 労働審判
示談交渉で会社と合意できない場合、裁判所で労働審判を行います。
労働審判は、話合いと訴訟の中間のような非公開の手続です。かかる時間は、通常は2か月半程度、長くて4か月程度です。
労働審判になった場合、8割程度は労働審判によって残業代を払ってもらえます。

③ 訴訟(いわゆる裁判)
労働審判の結果について労働者か会社のどちらかが同意しない場合等には、裁判所で訴訟を行います。訴訟で判決が出れば、会社はその判決を必ず守らなければなりません。

3-2. 残業代請求を弁護士に依頼するメリット

残業代請求を弁護士に依頼すると、以下の①~③のメリットがあります。

① 払ってもらえる金額が高くなる
弁護士は法律の専門家なので、残業代を正しく計算し、的確に法的主張や証拠の提示ができます。
また、弁護士をつけることで、会社は「断ったら訴訟になるかも」と考えるため、会社に舐められることがなくなります(実際に訴訟になることはほとんどありません)

② 短期間で払ってもらえる
弁護士をつけることで、残業代請求を会社に放置される可能性は低くなります。また、放置された場合でも労働審判等により残業代を払ってもらうことができます。

③ 交渉や書面作成の手間がかからない
あなたが、会社と交渉したり書面を作ったりする必要がなくなります。

他方、弁護士に依頼すると、弁護士報酬がかかります。
もっとも、通常、弁護士報酬は取得した残業代の25~30%程度なので、①の払って貰える残業代の増額分の方が多い場合がほとんどでしょう。
(依頼者の不安軽減のため、完全成功報酬で残業代請求をやってくれる弁護士もいます。)

(編集部注:未払い残業代について相談したい方は、残業代・解雇弁護士サーチでお近くの弁護士を探してみよう!)

3-3. 残業代請求に有益な資料

弁護士への法律相談や依頼をする際に揃っている必要はありませんが、残業代請求では、一般的に下記の①~④の資料があると有益でしょう。
① 就業規則、賃金規程など、始業・終業時刻等や給与の金額がわかる資料
② 給与明細など、支給された給与の金額・内訳がわかる資料
③ 雇用契約書(ある場合)
④ 労働時間の記録・証拠:タイムカード、出勤簿、GPSアプリ(ザンレコ)など
※ 必要な資料は具体的事情によってもかわるので、法律相談の際などに弁護士に確認してください。

4. 残業代の消滅時効

残業代は、残業をした日の給与支給日から2年間請求しないでおくと、基本的に、時効によって消滅してしまいます。

在職中は、毎月、新たに残業代が発生するため、時効消滅する分があっても、常に2年分の残業代を請求できますが、退職後は、請求するかどうか悩んでいるうちに請求できる額がどんどん減ってしまうことになりますのでご注意ください。

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